340.『野分』式場益平からの手紙(4)――ゴーン・ウィズ・ザ・ウィンド 本文改訂ということで言えばもう1つ、『坊っちゃん』の清のセリフ、「もう御別れになるかも知れません。存分御機嫌よう」(『坊っちゃん』第1章) 論者は先にこの「存分」を「随分」…
339.『野分』式場益平からの手紙(3)――漱石は誰の手紙も保存しない さて式場益平の話に戻って、漱石の葉書を再々掲する。〇書簡No.811 全文 明治40年1月[推定] はがき 駒込神明町七十三 式場益平様/本郷西片町十ロノ七 夏目金之助 野分の御批評難有…
338.『野分』式場益平からの手紙(2)――115年目の本文改訂『野分』篇 「先生私はあなたの、弟子です。――越後の高田で先生をいじめて追い出した弟子の一人です。」(『野分』第12章/大正6年12月漱石全集刊行会版漱石全集第2巻――以降20世紀の漱石…
337.『野分』式場益平からの手紙(1)――驚愕の高岡市と高田市 例によって漱石作品本文の引用(青色文字)は、原則として岩波書店の平成版『漱石全集』『定本漱石全集』に拠る。ただし現代仮名遣いに改めた。論者(筆者・引用者)による強調はアンダラインで…
336.『野分』はじめに――小説の神様が愛読した小説 本ブログは『三四郎』『それから』『門』の初期(青春)3部作、『彼岸過迄』『行人』『心』の中期3部作のあと、『道草』に入る前に、『坊っちゃん』『草枕』と寄り道したが、本ブログ草枕篇(28)で述べ…
335. 漱石「最後の挨拶」草枕篇 ブログ総目次 ブログ総目次草枕篇1 297.『草枕』降臨する神々(1)――不惑の詩人 漱石「最後の挨拶」草枕篇 1 - 明石吟平の漱石ブログ 草枕篇2 298.『草枕』降臨する神々(2)――『一夜』との関係 漱石「最後の挨拶」草枕…
334.『草枕』全51回詳細目次(2)――第8章~第13章 第8章 隠居老人の茶席に招かれる(全4回)1回 客は観海寺の大徹和尚と甥の久一(P93-2/御茶の御馳走になる)老人の部屋には支那の花毯が~和尚は虎の皮の敷物~久一は鏡が池で写生しているところ…
333.『草枕』全51回詳細目次(1)――第1章~第7章 先にも断った通り回数分けやそのタイトルは勝手に付けたものである。回数分けのガイドとなる頁の表示は、岩波書店版『定本漱石』第3巻(2017年2月初版)に拠った。第1章 山路を登りながら考えた (全4…
332.『草枕』全51回目次――全13章 第1章 山路を登りながら考えた (全4回)1回 店子の論理2回 雲雀の詩3回 非人情の旅4回 画工の覚悟第2章 峠の茶屋で写生と句詠 (全4回)1回 高砂の媼2回 那古井の志保田3回 源さんと馬子唄4回 長良の乙女第…
331.『草枕』補遺――登場人物と志保田家の秘密 さてそのユニークな『草枕』は、登場人物もまた独自の観点から造型されているようである。 漱石の1人称小説は、広く採り上げれば次の通りであろうか。(年代順) 《作品名・1人称の呼称・主人公の名前・職業身…
330.『草枕』目次(21)第13章(つづき)――何事かが成就した漱石唯一の目出度い作品 第13章 鉄道駅で大切な人との別れ (全3回)(承前)2回 那美さんの肖像画を描く話(P164-5/舟は面白い程やすらかに流れる。左右の岸には土筆でも生えて居りそうな…
329.『草枕』目次(20)第13章――太公望の秘密 第13章 鉄道駅で大切な人との別れ (全3回)1回 川舟に全員集合(P161-9/川舟で久一さんを吉田の停車場迄見送る。舟のなかに坐ったものは、送られる久一さんと、送る老人と、那美さんと、那美さんの兄さんと…
328.『草枕』目次(19)第12章(つづき)――野武士の髯と『一夜』の髯ある人 第12章 白鞘の短刀の行方 (全6回)(承前)4回 那美さん野武士に財布を渡す(P152-15/寝返りをして、声の響いた方を見ると、山の出鼻を回って、雑木の間から、一人の男があら…
327.『草枕』目次(18)第12章――蜜柑山の秘密 第12章 白鞘の短刀の行方 (全6回)1回 芸術家の条件(P143-8/基督は最高度に芸術家の態度を具足したるものなりとは、オスカー・ワイルドの説と記憶している。基督は知らず。観海寺の和尚の如きは、正しく此…
326.『草枕』目次(17)第11章(つづき)――若い人の意見の方が正しい 第11章 山門の石段を登りながら考えた (全4回)(承前)3回 お寺で大徹和尚と了念に会う(P135-12/「和尚さんは御出かい」「居られる。何しに御座った」「温泉に居る画工が来たと、取…
325.『草枕』目次(16)第11章(つづき)――有明海の星月夜 第11章 山門の石段を登りながら考えた (全4回)(承前)2回 一列に並んだサボテンと1本の木蓮の大樹(P132-10/仰数春星一二三の句を得て、石磴を登りつくしたる時、朧にひかる春の海が帯の…
324.『草枕』目次(15)第11章――明治39年版怒れる小説 第11章 山門の石段を登りながら考えた (全4回)1回 人のひる屁を勘定する人世(P129-11/山里の朧に乗じてそぞろ歩く。観海寺の石段を登りながら仰数春星一二三と云う句を得た。余は別に和尚に…
323.『草枕』目次(14)第10章――こっそり迎えたクライマックス 第10章 鏡が池で写生をしていると岩の上に (全4回)1回 鏡が池で思索にふける(P118-2/鏡が池へ来て見る。観海寺の裏道を、杉の間から谷へ降りて、向うの山へ登らぬうちに、路は二股に岐…
322.『草枕』目次(13)第9章(つづき)――甥っ子1人登場させたばかりに 第9章 那美さんに個人レッスン (全3回)(承前)2回 メレディスの小説を日本語に直しながら読む(P110-3/これも一興だろうと思ったから、余は女の乞に応じて、例の書物をぽつり…
321.『草枕』目次(12)第8章・第9章――早くも則天去私の考えが 『草枕』目次。引用は岩波書店『定本漱石全集第3巻』(2017年3月初版)を新仮名遣いに改めたもの。回数分けは論者の恣意だが、その箇所の頁行番号ならびに本文を、ガイドとして少しく附す…
320.『草枕』目次(11)第7章――神代のエロティシズム 第7章 浴場の怪事件 (全3回)1回 湯壺の中の哲学的考察(P84-2/寒い。手拭を下げて、湯壺へ下る。 三畳へ着物を脱いで、段々を、四つ下りると、八畳程な風呂場へ出る。石に不自由せぬ国と見えて、下は御…
319.『草枕』目次(10)第6章(つづき)――分刻みの恋(Reprise) 第6章 座敷に独り居て神境に入る (全4回)(承前)4回 振袖披露(P80-11/余が眼を転じて、入口を見たときは、奇麗なものが、既に引き開けた襖の影に半分かくれかけて居た。しかも其姿は余…
318.『草枕』目次(9)第6章――俳句と理屈が代わりばんこに登場する 第6章 座敷に独り居て神境に入る (全4回)1回 何も見ず何も想わない楽しみの世界(P71-11/夕暮の机に向う。障子も襖も開け放つ。宿の人は多くもあらぬ上に、家は割合に広い。余が住む部…
317.『草枕』目次(8)第5章――名前のない登場人物 第5章 まるで浮世床 (全4回)1回 髪結床の親方は元江戸っ子(P57-2/「失礼ですが旦那は、矢張(やっぱ)り東京ですか」「東京と見えるかい」「見えるかいって、一目見りゃあ、――第一言葉でわかりまさあ」「東京は…
316.『草枕』目次(7)第4章(つづき)――画工の疑似恋愛 第4章 スケッチブックの中の詩人 (全4回)(承前)3回 青磁の羊羹(P49-2/余は又ごろりと寝ころんだ。忽ち心に浮んだのは、 Sadder than is the moon's lost light, Lost ere the kindling of da…
315.『草枕』目次(6)第4章――那美さんのラヴレター 第4章 スケッチブックの中の詩人 (全4回)1回 添削もしくは付け文(P41-9/ぽかんと部屋へ帰ると、成程奇麗に掃除がしてある。一寸気がかりだから、念の為め戸棚をあけて見る。下には小さな用箪笥が見え…
314.『草枕』目次(5)第3章(つづき)――女王は3回初登場する(実践篇) 第3章 夜おそく那古井の宿へ到着(全4回)(承前)2回 歌う女(P30-13/そこで眼が醒めた。腋の下から汗が出ている。妙に雅俗混淆な夢を見たものだと思った。昔し宋の大慧禅師と云…
313.『草枕』目次(4)第3章――那古井は2度目というけれど 第3章 夜おそく那古井の宿へ到着(全4回)1回 春の夜の夢(P27-10/昨夕は妙な気持ちがした。宿へ着いたのは夜の八時頃であったから、家の具合庭の作り方は無論、東西の区別さえわからなかった。何…
312.『草枕』目次(3)第2章――画工33歳那美さん25歳 第2章 峠の茶屋で写生と句詠(全4回)1回 高砂の媼(P15-3/「おい」と声を掛けたが返事がない。軒下から奥を覗くと煤けた障子が立て切ってある。向う側は見えない。五六足の草鞋が淋しそうに庇から吊…
311.『草枕』目次(2)第1章(つづき)――非人情の旅とは何か 第1章 山路を登りながら考えた(全4回)(承前)2回 雲雀の詩(P6-3/忽ち足の下で雲雀の声がし出した。谷を見下したが、どこで鳴いてるか影も形も見えぬ。只声だけが明らかに聞える。せっせと忙…