明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

漱石「最後の挨拶」野分篇 21

356.『野分』どのような小説か(4)――『明暗』への道 前項で述べた、漱石作品が「いつまでも読まれ続ける」ということで、すぐに思いつくもう1人の作家太宰治について、本ブログ草枕篇(6)でも取り上げた堤重久によって、作家本人の(初会の日の)こんな…

漱石「最後の挨拶」野分篇 20

355.『野分』どのような小説か(3)――道也のアリア 何度も書くように『野分』は、複数主人公が互いに親密な会話を交わす、あるいはバトルを繰り広げるという意味で、通俗小説的であるとも言える。この書き方はそのまま次回作『虞美人草』に引き継がれ、そこ…

漱石「最後の挨拶」野分篇 19

354.『野分』どのような小説か(2)――妹の力 先に(『主人公は誰か』の項目で)夫婦のあり方、兄弟について述べたからには、ここで「妹」について一言触れてみるのも、公平さという観点からは無駄ではあるまい。 末っ子あるいは1人っ子の漱石には当然弟も…

漱石「最後の挨拶」野分篇 18

353.『野分』どのような小説か(1)――男の小説 さて偉そうに言うわけではないが、『野分』の成功しなかったのは、白井道也と高柳周作の怒りが通俗小説的な世界に、バラバラに置き去りにされてしまったためであろうか。 白井道也(の心の裡の怒り)も高柳周…