明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

漱石「最後の挨拶」心篇 40

253.『先生と遺書』1日1回(10)――もうひとつの後日譚 10月2日(水)――変更箇所なし 日が一番高くなった頃、家に向かう俥の中からもう、実家の葬儀の幟は見えていた。 家の中はざわざわ人が行き交っていたが、思いのほか人の数は少なかった。葬儀はこ…

漱石「最後の挨拶」心篇 39

252.『先生と遺書』1日1回(9)――最後の小旅行 さて以前に述べた、『心』の小旅行のうち、先生とKの房総旅行、先生と私の郊外ハイキングに続く、先生の最後の道行きであるが、先に論者は、本項第30項《『両親と私』1日1回(5)――最後の日々》で、先…

漱石「最後の挨拶」心篇 38

251.『先生と遺書』1日1回(8)――処刑台の日々 第12章 悲劇の朝 (明治33年1月27日土曜~1月28日日曜)(26歳) Kの自裁:1月27日土曜 48回 奥さんは2日前に既にKに話をしていた~Kは態度を変えなかったので私は気付かなかった~策…

漱石「最後の挨拶」心篇 37

250.『先生と遺書』1日1回(7)――主人公が決断するとろくなことにならない(つづき) 第11章 最後の決断 (明治33年1月13日土曜~1月27日土曜)(26歳) 先生の求婚:1月22日月曜 44回 私は「覚悟」という言葉を、Kの御嬢さんに対する…

漱石「最後の挨拶」心篇 36

249.『先生と遺書』1日1回(6)――主人公が決断するとろくなことにならない 第8章 帰ってから (明治32年秋~冬)(25歳) 32回 御嬢さんは私を優先して世話を焼くようにみえた~10月中頃、Kの部屋から出る御嬢さんの後ろ姿を見る~御嬢さんがK…

漱石「最後の挨拶」心篇 35

248.『先生と遺書』1日1回(5)――主人公が小旅行するとろくなことにならない 第7章 房総旅行 (明治32年夏)(25歳) 28回 こうして海の中へ突き落したらどうする~丁度好い遣ってくれ~Kの安心の元は学問達成であるか、それとも御嬢さんであるか…

漱石「最後の挨拶」心篇 34

247.『先生と遺書』1日1回(4)――日本で最も有名な頭文字の人物「K」 第5章 Kの生い立ち (明治27年~明治31年)(20歳~24歳) 19回 幼友達K登場~真宗寺から医者の養家へ~先生とKは東京へ出て高等学校へ~同じ室で寝起きして将来を語り…

漱石「最後の挨拶」心篇 33

246.『先生と遺書』1日1回(3)――小石川の素人下宿 第3章 過去との訣別と新しい下宿生活の始まり (明治30年秋~冬)(23歳) 10回 小石川の台地に下宿を探す~ある軍人未亡人・1人娘・下女の素人下宿に入る~なぜこの家は下宿人を入れようとする…

漱石「最後の挨拶」心篇 32

245.『先生と遺書』1日1回(2)――白山島とは何ぞや 第2章 高等学校時代 (明治27年~明治30年)(20歳~23歳) 4回 東京の高等学校へ~田舎で家を監理してくれる叔父のこと~叔父は私の存在に必要5回 2年生になる前の夏休み~始めての帰省~…

漱石「最後の挨拶」心篇 31

244.『先生と遺書』1日1回(1)――手紙と電報の謎再び さて気を取り直して、いよいよ先生の手紙(遺書)である。手紙の冒頭は『両親と私』の17回ですでに披露されているので、それを「0回」として頭に付け足しておく。前述したように、『心』第3篇『先…

漱石「最後の挨拶」心篇 30

243.『両親と私』1日1回(5)――最後の日々 ここで改めて明治天皇御病気以降の、私と先生のカレンダーをまとめてみたい。 前述したように、兄の郷里滞在期間を短縮するため、出来るだけ前倒ししたカレンダーを心掛けた。(『両親と私』の)掲載回も付記す…

漱石「最後の挨拶」心篇 29

242.『両親と私』1日1回(4)――先取り先生の遺書 前項で述べたように、先生の迷い~電報~決心~遺書への流れは、時系列に整理しておく必要がある。それには『心』最終回の援けも借りなくてはならない。 まず取っ掛かりは御大葬の夜の乃木大将の殉死であ…