明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

漱石「最後の挨拶」野分篇 30

365.『野分』すべてがこの中にある(9)――漱石と秋 漱石にとって「生老病死」の話は無限ループに似て、きりがないのでこの辺でやめにしたいが、最後にもう1つ、漱石の全作品の棚卸ついでに、本ブログでもさんざんこだわっている、漱石の小説の「暦」につい…

漱石「最後の挨拶」野分篇 29

364.『野分』すべてがこの中にある(8)――病気をするために生れてきた(つづき) 《例題13 死に至る病》 病気だから死ぬのか、死ぬから病気なのか。病気もまた、漱石の小説に付き物である。「病気をしに生れて来た」漱石らしく、誰かが病気に罹らない漱石…

漱石「最後の挨拶」野分篇 28

363.『野分』すべてがこの中にある(7)――病気をするために生れてきた 漱石に似合わない「酒」の話のあとは、最後に漱石らしい「苦の世界」で終わりたい。「生老病死」と一口に言うが、いずれも自分1人の力ではどうにもならないものの代表である。表向き自…

漱石「最後の挨拶」野分篇 27

362.『野分』すべてがこの中にある(6)――愛だけが欠けていた 旅をすればこそ人は手紙も書く。では人は何のために旅するのか。愉しみのためだけに旅することも勿論あるだろうが、いつの時代でも人は生きるために移動する。漱石作品でも多くの登場人物は仕事…