明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

漱石「最後の挨拶」道草篇 51

425.『野分』詳細目次(2)――7章~12章


『野分』全12章全50回(つづき)

第7章 中野君の愛のヴィーナス
中野 VS. 婚約者 (明治39年11月 ある日)

1回 ヴィーナスに嫉妬する

中野君の婚約者新体詩を唄う~大勢の人の前では恥ずかしくて声が出せない~中野邸の庭にはヴィーナス像が~愛の神ヴィーナスは冷たい感じがする~ヴィーナスを愛するものは、自分を愛してはくれまい~女の批判は直覚的だが男の好尚は半ば伝説的である~男は美学に欺かれながら欺かれぬ女の判断を理解しない

2回 ヴィーナスの指輪
中野君はヴィーナス像の美を婚約者に説く~「あらいやだ。あなたは失敬ね」「だって待っててもあとをおっしゃらないですもの」~婚約者は父親から指輪を買って貰った~指輪は魔物である

3回 メリメ『ヴィーナスの殺人』
中野君婚約者にメリメをレクチャする~テニスをするのに邪魔になるのでヴィーナス像の指に指輪を掛けておいた~それを忘れたまま青年が田舎に令嬢を迎えに行く~結婚指輪は当座のものを買って間に合わせた~しかし婚礼の晩に庭のヴィーナスが寝室に上がってきて・・・

4回 中野君の語る高柳君の悲観病
神経質で自分で病気を拵える~慰めると却って皮肉を言う~失恋なの?~細君を貰ったら癒るかも知れないが元来が性分~遺伝か子供の頃何かあったのか~だって御自分で御金がとれそうなものじゃありませんか文学士だから~新潟県での~白井道也とのいきさつ~中野君の趣味は写真撮影

第8章 道也の人格論
高柳 VS. 道也 (明治39年11月 ある日)

1回 高柳君の孤独
道也の天地は人の為~高柳君の天地は己れのため~道也は人の世話・指導をする為に生れた~高柳君は人に世話され頼る為に生れた~道也は独りぼっちが苦にならぬ~高柳君は独りぼっちが苦しい~庭の梧桐も色が変わって虫喰いの1葉を除いてすべて枯れてしまった

2回 秋雨の中を外に出る
高柳君は肺結核か神経か~日の明るい朝を迎えるのが苦痛~1人ぼっちで翻訳の仕事~故里の母へ手紙を書きかける~梧桐の最後の1葉が落ちる~いたたまれず外に出る~下宿の婆さんに部屋の傘を取って来てもらう

3回 高柳君道也先生と遇う (高柳君の過去Ⅱ)
初時雨の往来を歩く~行き先は湯島天神か~岩崎の塀へ頭をぶつけて壊したい~上野の図書館帰りの道也に遇う~「じゃ坂を上って本郷の方へ行きましょう。僕はあっちへ帰るんだから」~「創作をなさればそれで君の寿命は岩崎などよりも長く伝わるのです」~「先生私の歴史を聞いて下さいますか」

4回 孤独は崇高である
先生罪悪も遺伝するものでしょうか~「あなたの生涯は過去にあるんですか未来にあるんですか。君はこれから花が咲く身ですよ」~独りぼっちは崇高なものです~「人が認めてくれるような平面ならば人も上ってくる平面です。芸者や車引に理会されるような人格なら低いにきまってます」~後世に名を残そうと力むなら、周囲と隔絶されてあるべき、その周囲から理解を得ようとしてはいけない~道也は違う、只自分の満足を得るために世のために働く

第9章 中野君の結婚披露
高柳 VS. 中野夫妻 (明治39年12月 ある日)

1回 結婚披露の園遊会
杉の葉のアーチと蜜柑の木のアーケード~高柳君を待つ新夫妻~厭でも来ると約束すると来ずにいられない男だからきっとくる~きまりのわるいのは自信がないから~自信がないのは人が馬鹿にすると思うから~「入らっしゃるなら、ここにいて上げる方がいいでしょう」

2回 夫婦を驚かせた高柳君の服装
憐れなる高柳君の服装~互いに「是は」と思う~「是は」が重なると喧嘩なしの絶交となる~塩瀬の羽織を着た客とぶつかる

3回 独りぼっちの園遊会
菊の鉢と松の鉢~林檎の大皿と蜜柑の大皿~園遊会に燕尾服を着てくる非常識な男が2人いた~舞台と楽隊と朝妻船~葉巻と紙巻の呑み比べ

4回 高柳君は独りで帰ったのだろうか
株式値上がりの話~鴨猟の話~高柳君は新夫妻に挨拶せずに帰る~「あれで一人じゃやっぱり不愉快なんだ。不愉快なら出てくればいいのになおなお引き込んでしまう。気の毒な男だ」

第10章 道也と細君生計のピンチ
道也 VS. 細君/細君VS. 兄 (明治39年12月11日火曜)

1回 足立教授の序文が貰えない

木枯らしが吹くようになった~435枚も書いた原稿が売れない~足立に序文を頼んだが断って来た~道也は筆で食うと言う~細君はこれでは生活できないと言う

2回 細君の悩み
細君と兄は同意見~執筆なんかやめて定職に就け~足立にもう一度序文を頼んでみよう~細君の胸の裡~細君の父母はもういない~可愛がってくれる筈の人はこの世に1人もいない~世の夫は皆あんなものか~ならば結婚する女はいなくなるだろう~夫は変わるか夫を変えられるか

3回 道也の留守に兄が来る
道也の兄は会社の社員~その会社の社長は中野君の親爺~細君の名は御政~弟が兄の家に寄り付かないのは変人だから~あれほど訳がわからないとまでは思わなかった~女の云う事を聞かないので困り切ります~近頃は少しどうかしているんじゃないかと思います~しきりに金持を攻撃する~そんな事をしてどこが面白い~一文にもならず人からは擯斥される~自分の損になるばかり

4回 道也を教師の道へ引き戻す策略
当人の方から雑誌や新聞をやめて教師になりたいと云う気を起させる~百円の融通期限は12月15日~返済を厳しく迫って定職に就かざるを得ないよう仕向ける~頭を下げて来た時に取って抑える~おれの云う事を聞かなければあとは構わない~「何分宜しく願います」~神田に道也の演説広告が出ていてびっくり

第11章 道也の演説会 (全6回)
道也 VS. 細君/高柳 VS.道也の演説 (明治39年12月中旬)

1回 演説会当日に兄から呼び出し

兄の家から使いが来る~すぐ来いという~道也は演説会があるので行かれない~演説会は電車事件で捕まった仲間の家族を援けるため~細君は社会主義者と間違われたらどうすると心配~間違えても正しい道なら構わない

2回 道也の演説「現代の青年に告ぐ」始まる
演説会の聴衆に高柳周作がいる~道也の演説が始まる~自己は過去と未来をつなぐものである~自己は何のためにあるのか~人間は過去のために生きるのか~それで明治の代は完成するか

3回 明治の40年は次の世代の為に在る
明治の40年は弾指の間に過ぎない~弾指の間に何が出来る~明治の代に過去はない~明治は先例のない代である~我々は過去を顧みるのではなく、未来のために生きるべきである~紅葉一葉は我々の先例になるために生きたのではない、我々を生むために生きたのである

4回 どの道を歩むか何を成し遂げたか
魂の理想像を想像できるか~西洋にそれを求めることに意味があるか~理想あるものは歩くべき道を知っている~その道はどんなに困難でも必ず行かなくてはならない~理想の大道を行き尽したか否かは、ただ後世の天下のみが知るだろう

5回 学問と金儲けは正反対の道である
学問する者の理想とは何か~学問は金に遠ざかる器械である~学者と町人とはまるで別途の人間である~それは互いに矛盾相反する存在である~物の理が分かるということと金を稼げるということは相反する特質である~学問に費やす時間と金儲けに費やす時間は共有出来ない~つまり財産と地位を有する者は物事の道理が分からないことになる

6回 道徳・人生・社会の問題は学者に聞け
報酬は労力に付随して得られる筈である~しかし現実には報酬は眼前の利害に直結して決定される~高等な労力に高等な報酬が伴なわない~金を多く得る者が高尚な努力をしたとは限らない~金の多寡で人物の価値は決まらない~金持ちは金儲けの専門家だが人事や物事の理屈は分からない~人生や社会の問題は学者に聴くしかない~金持ちはそれを理解できないところが金持ちたる所以である

第12章 道也の『人格論』を百円で買う
高柳VS. 中野/道也VS. 債権者/高柳VS. 道也 (明治39年12月16日日曜)

1回 中野君は高柳君に療養を勧める

中野君が高柳君の下宿を訪れる~医者は転地を勧める~中野君は援助を申し出るが高柳君は受けたくない~元気なときならともかく病気になって援助を受けるくらいならいっそ死んだ方がよい

2回 高柳君の傑作に百円の前渡し
机の上の書きかけの小説~中野君の提案~述作の完成と引き換えに保養の費用を負担するという取引~中野君は高柳君に百円の札束を渡す

3回 百円を懐中して道也先生を訪なう
中野君の提案は妻の発議~それじゃ奥さんによろしく~この己を出さないでぶらぶらと死んでしまうのは勿体ない~これ一つ纏めれば死んでも言訳は立つ~今の百円は他日の万金よりも貴い~転地の前に道也に暇乞いに出掛ける

4回 道也先生の原稿を百円で買う
昨日が期限の百円をどうあっても今夜中に~著述が本屋に売れるまで待っては呉れますまいか~高柳君は道也の原稿『人格論』をちょっと見せてくれと言う~告白と結末

漱石「最後の挨拶」道草篇 50

424.『野分』詳細目次(1)――1章~6章


 漱石の初期名作3部作『猫』『坊っちゃん』『草枕』の詳細目次を附した後に『道草』詳細目次に入る予定であったが、明治39年怒りの3部作『坊っちゃん』『草枕』『野分』として、最後に『野分』の目次も加えることにしたい。登場人物列記の代わりに、主人公の章ごとの対決組合せを明記することとする。内容については本ブログ野分篇と同じである

『野分』全12章全50回

第1章 白井道也は文学者である
道也 VS. 細君 (明治39年10月下旬)

1回 田舎の中学を3度飄然と去る
越後の石油の町~会社の紳士連と衝突~九州の炭鉱の町~金と実業家に逆らう~中国辺の田舎~旧藩主の華族に媚びない態度~教場は神聖である

2回 夫を理解する細君はこの世に在るか
夫の社会的地位によって態度を変える細君は夫の知己とは云えぬ~人格が流俗より高い者は低い者の手を引いて高い方へ導いてやるのが責務~教育の目的は正しい判断の出来る人間を作ること~道也は正しい人である~細君は道也をただ夫と思っている

3回 もう田舎へは行かぬ教師もやらぬ
道也の考えを田舎で通すには性急過ぎた~学校に愛想を尽かした道也は筆の力で立つ決心をする~細君は不安がいっぱい~さしあたって金がない~道也は兄を信用していない~同級生の足立は大学教授~「あなたはよっぽど強情ね」

第2章 高柳君と中野君
高柳 VS. 中野 (明治39年10月下旬 ある日)

1回 高柳君昼食を奢られる
日比谷公園で散歩中の高柳君が中野君に逢う~女の着物がただ綺麗に見えるだけでは作家として失格か~レストランで生ビールとフルコースの洋食をご馳走になる~商人か実業家のような下品な客(土鍋の底)がいる

2回 高柳と中野の奇妙な友情
高柳君は早くも生活に疲れている~恵まれた境遇の中野君はそれが分からない~高柳君は無口で孤独な厭世家の皮肉屋~中野君は鷹揚で円満な趣味に富んだ秀才~この2人が親友である不思議

3回 中野君にも悩みはある
高柳君たちの大学は3年制~幸福そうに見える中野君にも色々心配事がある~高柳君は相手にしない~高柳君の散歩は新橋駅へ遺失物探しの序で~失くした物は生活費のための翻訳原稿

4回 白井道也を追い出した話
高柳君のアルバイトは地理教授法の翻訳~中野君は文士として立つ意欲を持つ~貧しい高柳君にはスポンサーが必要か~新潟の中学校時代に白井道也という英語の教師をいじめて追い出したことがある

5回 中野君は小説家志望
白井道也の餞別の言葉~中野君は幻想小説を書こうとしている~高柳君は人を平伏させる文章を書きたい~もう冬服の時期だが着る服もない~高柳君の夏服はまだ支払いも済んでいない

第3章 江湖雑誌の編輯記者
道也 VS. 中野 道也VS. 細君 (明治39年10月下旬 数日後)

1回 道也先生中野君の邸を訪問
中野君は若旦那様~中野君の父親も学士であれ帝大の1期生か~ただし法科か理科である~西洋間の応接室~道也が名刺を出すと中野君ははっとする~普通の大家ばかりでは面白くない~なるべく新しい方もそれぞれ訪問することになった~そこで実はちょっと往って来てくれと頼まれて来た

2回 中野君の男女恋愛論
テーマは現代青年の煩悶に対する解決~「青年の煩悶は多く取るに足りない~その中で恋だけは避けて通れぬ~最も痛切・深刻・劇烈な煩悶たる恋は人間を形作る~恋を経験して始めて人は解脱できる天国へも行ける」

3回 帰宅した道也先生
「あなたはもしや高柳周作と云う男を御存じじゃないですか」~玄関で中野君の婚約者とすれ違う~道也の家は柳町の近く市谷薬王寺~反故紙でランプの芯を拭く~丸めた紙を庭へ捨てる~道也は装飾のない生活~女は装飾だけで生きている

4回 湯豆腐と鉄火味噌の夕食
寸暇を惜しんで執筆~台所で細君と下女が笑う~湯豆腐と鉄火味噌の夕食~「何でもいい。食ってさえいれば何でも構わない」~公正なる人格のために生きる~公正なる一の人格は百の華族・紳商・博士に優る~しかし生計は詰まる~壁に掛けられた細君の小袖

5回 細君は道也の兄の家へ金策に行った
道也はまだ兄を疑っている~細君は兄に百円の借金話を持ち掛ける~細君は頬骨の高い顔~もう1ヶ月もすれば百や二百の金は手に入る見込がある~今夜は20枚書いた

第4章 高柳君音楽会へ迷い込む
高柳 VS. 中野 (明治39年10月下旬 ある日)

1回 高柳君慈善音楽会に誘われる
近頃は喜劇の面をどこかへ遺失してしまった~失くした原稿の捜査はもう御やめだ~西洋音楽会の切符がある~高柳君は気が進まぬ~「あれは徳川侯爵だよ」「よく知ってるね君はあの人の家来かい」~「いやかい?いやなら仕方がない僕は失敬する」「行こう」

2回 高柳君は始めての音楽会
「おい帽子をとらなくっちゃいけないよ」「外套は着ていてもいいのか」~場違いな薄汚れた着物~高柳君はこんな所へ来なければよかったと思った~中野君は3列後ろの女性に会釈している~高柳君は無人の境に独りぼっちで佇んでいる

3回 高柳君はたまらなく寂しい(高柳君の過去Ⅰ)
高柳君の父親は7歳の時いなくなった~田舎では母が今でも独り~「君面白くないか」「そうさな」~画工が写生帖にスケッチ「泥棒だね顔泥棒」~休憩と後半の演奏~夢の中にいる高柳君はたまらなく不愉快

4回 道也の訪問を受けた中野君の話
高柳君は肺をやられているようだ~白井道也が江湖雑誌の談話取材に来た話~道也の服装は高柳君と似たり寄ったり~西洋軒の前で別れる~高柳君はまた独りぼっち

第5章 ミルクホールで江湖雑誌を読む
高柳 VS. 道也の論文 (明治39年10月下旬 同じ日)

1回 高柳君ミルクホールに入る
地理学教授法の翻訳原稿料1枚50銭1月50枚以内~1月25円以内が高柳君の生活費~余所からの収入10円弱は故里の母へ仕送り~故郷はもう落鮎の時期~ミルクホールで江湖雑誌を読む~中野春台「僕の恋愛観」~にやりと笑う~「解脱と拘泥……憂世子」~これは少し妙だよ

2回 憂世子「解脱と拘泥」(江湖雑誌)
拘泥は苦痛である~拘泥している間は解脱出来ぬ~解脱法第1:物質界に重きを置かぬものは物質界に拘泥する必要がない(釈迦や孔子)~解脱法第2:目立つことを一切しないと拘泥しなくて済む(常人)~江戸町人・芸妓通客・西洋紳士は始めから流俗に媚びて一世に附和する~第2の解脱法を極力第1に近付けるものが道徳である~この道を理解しないものを俗人という~理解しないのはまだ許されるがこれに圧迫を加えるものは罪人である

3回 高柳君は憂世子の論文に心を衝たれる
結語「学徒は光明を体せん事を要す。光明より流れ出ずる趣味を現実せん事を要す。然してこれを現実せんがために、拘泥せざらん事を要す。拘泥せざらんがために解脱を要す」~文学士のように二十円くらいで下宿に屏息していては人間と生れた甲斐はない

第6章 高柳君道也に弟子入りする
高柳 VS. 道也 (明治39年11月 ある日)

1回 高柳君道也に面会す
だんだん寒くなった~真正の御辞儀~私の家へ話を聞きに来るような者はいない~何かやりたいが暇がなくて困る~金がなくても暇がなくても困ったなりにやればいい~何もしなくていい

2回 苦労が文学者を創る
金がなくても時間がなくても文学ならそれでいい~文学は他の学問とは違う~文学は人生そのものである~人生の障害物(貧困・多忙・圧迫・不幸・悲酸・不和・喧嘩)に進んで飛び込んでこその学問である

3回 独りぼっちになれないようでは文学者にはなれない
食う方と本領を同時にやろうとすると中々骨が折れる~談話筆記の中には下らないものが多い~中野は私の同級生です~「昔から何かしようと思えば大概は独りぼっちになるものです」~人に排斥されるのを苦にするようでは文学者にはなれない~苦しんだ耶蘇や孔子を筆の先で褒めるているだけでは偽文学者~そんな者に耶蘇や孔子を褒める権利はない

4回 高柳君は道也の天下唯一の知己かも知れない
「世の中は苦しいものですよ。知ってますか」~私も田舎の学校はだいぶ経験がある~「憂世子というのは私です。読みましたか」~「それじゃ君は僕の知己ですね。恐らく天下唯一の知己かも知れない」~商人は人を騙すために生きている~私は瘦せてはいるが大丈夫

漱石「最後の挨拶」道草篇 49

423.『草枕』詳細目次(2)――8章~13章


第8章 隠居老人の茶席に招かれる(全4回)

1回 客は観海寺の大徹和尚と甥の久一
老人の部屋には支那の花毯が~和尚は虎の皮の敷物~久一は鏡が池で写生しているところを和尚に見つかったことがある

2回 老人の娘那美さんの噂話も出る
茶碗は杢兵衛~老人は画工が青磁の皿と羊羹を賞めたことを知っていた~サファイアルビーの菓子皿~那美さんは健脚

3回 端渓の硯と物徂徠の大幅
和尚も漱石も山陽が嫌い~徂徠の方がまし~九眼の端渓~松の皮の蓋を取ると

4回 久一は召集されることになった
端渓の素晴らしさ~支那へ行けば買えるのか~日露戦争と久一の運命

第9章 那美さんに個人レッスン(全3回)

1回 非人情な小説の読み方
部屋で那美さんと語る~画工は洋書を読んでいた~何ならあなたに惚れこんでもいい~惚れても夫婦にならないのが非人情な惚れ方

2回 メレディスの小説を日本語に直しながら読む
普通の小説はみんな探偵が発明したものですよ~非人情な所がないから些とも趣がない~地震!~非人情ですよ

3回 画工と那美さん一触即発
振袖披露は画工のための親切心~「見たいと仰ゃったからわざわざ見せて上げたんじゃありませんか」「何か御褒美を頂戴」~久一は兄の家に居る~私が身を投げてやすやすと往生して浮いて居る所を奇麗な画にかいて下さい

第10章 鏡が池で写生をしていると岩の上に(全4回)

1回 鏡が池で思索にふける
探偵は掏摸の親分~菫の花は帝王の権威に対峙しているという中学程度の観想~鏡が池の水草は水死美人の黒髪か

2回 那美さんの顔には憐れの情が足りない
赫い深山椿は嫣然たる妖女~水死美人には那美さんの顔が一番似合う~那美さんの表情には憐れが足りない

3回 源兵衛の語る鏡が池の名の由来
再会した馬子の源兵衛は四十男~源兵衛が語る志保田の嬢様の黒い血筋~昔梵論児に懸想した志保田の嬢様が1枚の鏡を懐にして身を投げたことがある

4回 岩の上に立つ那美さんはひらりと身をひねる
去年亡くなった母親も少し変であった~池の向こう側は大岩が突き出している~その上に那美さんが立っていた~驚きの跳躍

第11章 山門の石段を登りながら考えた(全4回)

1回 人のひる屁を勘定する人世
宵の明星もしくは月明かりの夜~用事もないがつい足が山門に向かう~円覚寺の塔中での思い出~漱石の本音が出る

2回 一列に並んだサボテンと1本の木蓮の大樹
仰数春星一二三~岡つつじの怪~サボテン~木蓮の花~庫裏を訪ねる

3回 お寺で大徹和尚と了念に会う
履物を揃えないので了念に叱られる~寺の下には朧夜の海と漁火が見える~画描きにも博士があるか~東京の電車はうるさくてつまらぬもの

4回 和尚との禅問答
屁の勘定た何かな~はあ矢張り衛生の方かな~衛生じゃありません探偵の方です~那美さんは和尚の法話を聞いて人間が出来てきた~那美さんは松の木である~奇麗な上に風が吹いても苦にしない

第12章 白鞘の短刀の行方(全6回)

1回 芸術家の条件
芸術家の条件~1枚の画もかかない画家~空気と対象物と色彩の関係~日本固有の空気と色を出すには~山へ行って画を描こうと思う

2回 那美さんは家の中で常住芝居をしている
向こう2階に那美さんが立つ~那美さんの左手には白鞘が~無意識の常住芝居~藤村子厳頭の吟~美しいものは正しい

3回 海の見える野原で写生ならぬ漢詩に浸る
海は足下に光る~木瓜の花の下に寝ころぶ~木瓜の花に生まれ変わりたい~子供の頃木瓜の木で筆立てを作ったことがある~木瓜の詩完成

4回 那美さん野武士に財布を渡す
髯の男を注視する~那美さんが現われる~二人は接近して向き合う~那美さんの懐には白鞘が~現れたのは財布であった

5回 画工那美さんに見付かる
すぐ那美さんに見つかる~ここへ入らしてまだ一枚も御描きなさらないじゃありませんか~あれはわたくしの亭主です

6回 蜜柑山の久一さんの家へ行く
兄のいる本家へ行く~南向きの庭の先は蜜柑畠~その先は青海~「久一さん」「そら御伯父さんの餞別だよ」

第13章 鉄道駅で大切な人との別れ(全3回)

1回 川舟に全員集合
久一さん軍は好きか嫌いかい~那美さんが軍人になったら嘸強かろう~太公望事件~誰も彼も運命の輪から外れることは出来ない

2回 那美さんの肖像画を描く話
先生私の画をかいて下さいな~画工の驚ろきは那美さんの喜び~あの山の向こうを貴方は越していらしった~舟が着くとなかなか大きな町である

3回 永訣。那美さんに突然浮かんだ憐みの表情
画工の汽車論~汽車は文明であるが文明はまた人を押さえつける~文明による平和は真の平和ではない~危ない危ない~「愈御別かれか」「それでは御機嫌よう」「死んで御出で」~野武士の髯面が~最後の一句

漱石「最後の挨拶」道草篇 48

422.『草枕』詳細目次(1)――1章~7章


 漱石の初期名作3部作。『猫』『坊っちゃん』に続き、同じように『草枕』にも詳細目次を附す。

第1章 山路を登りながら考えた

1回 店子の論理
俗世間の住みにくさと芸術の効用~主人公は30歳余~大きな石を迂回して旅を続ける

2回 雲雀の詩
シェリーの詩~雲雀は幸福か、それとも雲の中で死ぬのか~しかし苦しみのないのは何故だろう

3回 非人情の旅
喜怒哀楽・苦怒騒泣は人の世につきもの~芝居や小説もそれを免れぬならそんな世界はまっぴら

4回 画工の覚悟
旅に出逢うすべての人事を能舞台の出来事と見做すと~すべての人事を画帖に封じ込めたら

第2章 峠の茶屋で写生と句詠

1回 高砂の媼
茶店の婆さんは高砂の媼にうり二つ~婆さんが美しいのではなく高砂の媼が美しいのだ~婆さんの横顔を写生する

2回 那古井の志保田
さあ御あたり~いい具合に雨も晴れました~ここから那古井迄は一里足らずだったね~宿屋はたった一軒だったね

3回 源さんと馬子唄
源さんと婆さんが那古井の御嬢様の噂話をする~嫁入のとき馬でこの峠を越した~ミレーのオフェリア

4回 長良の乙女
志保田の嬢様の話~長良の乙女の話~ともに2人の男が祟った~今度の戦争で夫の銀行が倒産

第3章 夜おそく那古井の宿へ到着

1回 春の夜の夢
夜8時の到着~晩い夕食と入浴~女中1人の怪~房州旅行の思い出~長良の乙女とオフェリアの夢

2回 歌う女
誰か小声で歌をうたっている~長良の乙女の歌か~海堂を背に月影に浮かぶすらりとした女~深更那美さん初登場~芸術家と常人の違い

3回 侵入者
余計な詮議は非人情の妨げ~詩人になる簡便法とは~入口の唐紙から女の影が~深夜の侵入者

4回 不意討ち
ゆっくりめの朝風呂~風呂場の戸口での遭遇~那美さんの初セリフ~見たことのない表情~画にしたら美しかろう~不仕合せな女に違いない

第4章 スケッチブックの中の詩人

1回 添削もしくは付け文
写生帖に落書~発句に付け句か添削か~縁側のある部屋~やっと落ち着いて宿からの景色を見る 

2回 晩い朝食もしくは聴き取り調査
那美さんが引き返した理由~「うちに若い女の人がいるだろう」「へえ」「ありゃ何だい」「若い奥様で御座んす」~「和尚様の所へ行きます」「大徹様の所へ行きます」~向う二階の欄干に頬杖を突いて佇む

3回 青磁の羊羹
メレディスの詩~那美さん羊羹を持って部屋に来る~源兵衛と婆さんは那美さんの情報源

4回 スケッチブックの中に入ってみる
茶道は商人のやること~始めての会話は身上調書~長良の乙女の話の出所は那美さん~ささだ男もささべ男も両方男妾にするばかり

第5章 まるで浮世床

1回 髪結床の親方は元江戸っ子
髪結床は神田松永町の出身で癇性でおしゃべり~しかも酔っ払っていた~石鹸なしに逆剃をかける

2回 志保田の出返り娘はキ印
髪結床は那古井の宿の隠居と東京で一緒だった~旦那あの娘は面はいい様だが本当はキ印しですぜ~本家の兄と仲が悪い

3回 納所坊主泰安の災難
観海寺の泰安が那美さんに付け文~那美さん読経中の破天荒~駘蕩たる春光と髪結床は対照の妙か

4回 観海寺の小坊主了念
了念登場~泰安は生きて修業中~石段を上がると何でも逆様

第6章 座敷に独り居て神境に入る

1回 何も見ず何も想わない楽しみの世界
静かな宿の夕暮れ~忘我の境地で詩の世界へ入る~詩境をすら脱却する境地とは

2回 感興を画に乗せて
詩境を画にするには~心を瞬時に截り取って絹の上に開示する~物外の神韻を伝える絵画はあるか

3回 画にもならず音楽にもならない興趣を詩で表現する方法
音楽はどうか~画工の結論は写生帖に詩を書くこと~すぐ画になりそうな詩が出来た

4回 振袖披露
那美さんが振袖を着て向こう2階の椽側を歩いている~表情もなく何度も往ったり来たり

第7章 浴場の怪事件

1回 湯壺の中の哲学的考察
湯の中で思うのはまず白楽天~次に風流な土左衛門~そして再びミレーのオフェリア

2回 三味の音を聴いていると女が裸で入って来た
どこかで三味の音が~万屋の御倉さんの想い出~突然風呂の戸が開いて那美さんが裸で入って来た

3回 那美さん湯に入る
声を掛けようか迷う~女の裸体は画工には美しい画題~しかし西洋画の裸婦モデルとは一線を隔す~那美さんの裸体は原始の美を発揮している

漱石「最後の挨拶」道草篇 47

421.『坊っちゃん』詳細目次(2)――7章~11章


第7章 マドンナ
明治38年9月30日土曜~10月9日月曜)

1回 萩野の家へ宿替え
(9月30日土曜~10月6日金曜)
いか銀の女房の狼狽~士族屋敷で下宿探し~うらなりの家を訪ねる~その夜から萩野の家の下宿人となる~清からの手紙を待ちわびる~萩野の婆さんの世間話

2回 渾名の付いてる女にゃ昔から碌なものがいない
10月6日金曜
婆さんの語るマドンナとうらなりの婚約事件~赤シャツの横槍~山嵐の仲介~赤シャツと山嵐の確執

3回 やっと届いた清からの手紙
(10月6日金曜~10月9日月曜)
山嵐て何ぞなもし~符箋つきの清の手紙を読む~もし渾名をつけたら清だけに知らせろ~お小遣いがなくて困るかも知れないから為替で10円あげる~芋責めの食事を生卵でしのぐ

4回 マドンナ初登場
(10月9日月曜)
停車場でうらなりと会う~遠山の母娘登場~赤シャツも来る~金鎖りと金側の赤シャツの時計~上等の切符で下等の車輛に乗り込む

5回 野芹川の散歩デート
(10月9日月曜)
温泉を出て散歩する~化物が寄り合う物騒な世界~早く切り上げて東京へ帰りたい~野芹川の堤で赤シャツとマドンナに出くわす

第8章 赤シャツ
明治38年10月10日火曜~10月13日金曜)

1回 赤シャツと山嵐
(10月10日火曜~10月13日金曜)
いいえ僕はあっちへは行かない湯に入ってすぐ帰った~赤シャツは嘘つきだ~机の上に置いたままの1銭5厘~山嵐とはまだ仲直り出来ないのに赤シャツとは交際する

2回 赤シャツの家で昇給話を聞く
(10月13日金曜)
赤シャツの家に呼ばれて行く~赤シャツの家には弟がいる~増給の話~うらなりの転勤話~数学主任のほのめかし~君俳句をやりますか

3回 萩野の婆さん再び
(10月13日金曜)
うらなりの転勤は赤シャツと校長の陰謀~誰が上がってやるもんか~先生は月給が御上りるのかなもし

4回 増給を断る奴が世の中にたった一人飛び出して来た
(10月13日金曜)
赤シャツの家にまた行く~野だが来ている~赤シャツの顔は金時のようだ~増給を断る~赤シャツの御談義ふたたび

第9章 送別会の夜
明治38年10月16日月曜)

1回 坊っちゃんの下宿で送別会の打合せ
(10月16日月曜)
山嵐の謝罪~1銭5厘撤収~仲直り~酒なんか飲む奴は馬鹿だ~山嵐を家に呼ぶ~送別会でうらなりを応援したい~赤シャツの悪行を暴きたい

2回 送別会始まる
(10月16日月曜)
送別会は花晨亭の50畳敷~あれは瀬戸物じゃありません伊万里です~山嵐の稲光にべっかんこうで応える

3回 山嵐の送別の言葉
(10月16日月曜)
美しい顔をして人を陥れるようなハイカラ野郎は延岡には1人もいない~不貞無節なる御転婆を慚死せしめんことを~うらなりの態度はまるで聖人~宴席は大分乱れてきた

4回 狂乱の五十畳敷
(10月16日月曜)
校長に続いて赤シャツも退席~芸者も混じって大宴会~赤シャツの馴染みの芸者は鈴ちゃん~越中褌の裸踊り~野だをぽかりと殴る~山嵐は野だを払い倒す

第10章 祝勝会の夜
明治38年10月23日月曜)

1回 祝勝会に生徒を引率
(10月23日月曜)
こんな奴等と一緒では人間が堕落するばかり~早く東京へ帰って清と暮らしたい~日本人は皆口から先へ生まれた

2回 山嵐が牛肉を持って訪れる
(10月23日月曜)
清に手紙を書こうとしたが1字も書けない~庭にある1本の蜜柑の木~湯島のかげまた何だ~君そこの所はまだ煮えていないぜ~赤シャツには馴染みの芸者がいる~赤シャツ退治の秘策

3回 祝勝会の余興
(10月23日月曜)
赤シャツの弟が山嵐を誘いに来た~くす玉の花火が上がる~太鼓と真剣による高知の踊り

4回 師範と中学の乱闘騒ぎに巻き込まれる
(10月23日月曜)
赤シャツの弟が先生喧嘩ですと呼びに来る~止めに入る山嵐坊っちゃん~巡査に捕まったのは2人だけ

第11章 天誅
明治38年10月24日火曜~11月10日金曜/明治38年11月~明治39年3月)

1回 今朝の新聞を御見たかなもし
(10月24日火曜)
近頃東京から赴任した生意気なる某~再び教育界に足を入るる余地なからしむる~いや昨日は御手柄で~名誉の御負傷でげすか~赤シャツは自分の弟が誘ったせいだと弁明して回る

2回 新聞に書かれるのは泥亀に喰い付かれるようなもの
(10月24日火曜~10月26日木曜)
赤シャツの策に乗ったようだ~わるくすると遣られるかも知れない~一度新聞に書かれるとどうすることも出来ない

3回 履歴なんか構うもんですか履歴より義理が大切です
(10月30日月曜~10月31日火曜)
山嵐は校長に処決を求められた~誰が両立してやるもんか~校長室での談判~辞職されてもいいから代わりのあるまでどうかやってもらいたい

4回 奥さんの御ありるのに夜遊びはおやめたがええぞなもし
(11月1日水曜~11月8日水曜)
山嵐退職~枡屋の2階から角屋を見張る~1週間頑張っていい加減飽きてきた~八日目に山嵐は眼を輝かせた~小鈴の入るのを見たという

5回 増給が嫌だの辞表を出したいのって、ありゃどうしても神経に異状があるに相違ない
(11月8日水曜~11月9日木曜)
赤シャツと野だがやっと現れる~坊っちゃんの悪口を言っている~朝5時までの辛い監視~角屋から出て来た2人を尾行~城下をはずれたところで襲撃~野だの顔へ玉子を叩きつける

6回 野だに貴様も沢山かと聞いたら無論沢山だと答えた
(11月9日木曜~11月10日金曜/明治38年11月~明治39年3月)
山嵐は赤シャツを坊っちゃんは野だをぽかぽか殴る~7時下宿に帰って荷造りして出る~汽車で港屋へ~退職届を投函~山嵐と午後2時まで寝た~夜6時の汽船で出立~上京と後日譚

漱石「最後の挨拶」道草篇 46

420.『坊っちゃん』詳細目次(1)――1章~6章


『猫』同様『坊っちゃん』も各章を勝手に(新聞連載ふうに)回数分けして、そのタイトルと内容の要約も附してみる。カレンダも論者の推定。
 目的は(これまた『猫』同様)いちいちこの名作を再読しないでも、どこに何が書かれているか一目で思い出せるようにするためである。
 回数分けの詳細な場所(頁と行)については本ブログ坊っちゃん篇を参照されたい。

第1章 坊っちゃん
明治16年~明治38年明治38年8月31日木曜~9月2日土曜)

1回 親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る
明治16年1歳~明治28年13歳)
飛降事件~刃傷事件~勘太郎事件~人参畠事件~井戸埋立事件

2回 こいつはどうせ碌なものにはならない
明治29年14歳~明治30年15歳)
家族の誰からも愛されない~母の死に目に会えず~下女清の登場~勘当事件(飛車投擲事件)~清だけが可愛がってくれる

3回 母が死んでから清は愈おれを可愛がった
明治31年16歳~明治34年19歳)
父と兄と男だけの味気ない生活~清の同情と異様な溺愛~3円借金事件

4回 六百円の使用法に就て寝ながら考えた
明治35年20歳)
父の死~財産整理~兄に600円貰う~清は50円貰う~兄との別れ~物理学校入学

5回 もう御別れになるかも知れません
明治35年20歳~明治38年23歳/明治38年8月31日木曜~9月2日土曜)
卒業~校長の呼び出し~中学校教師の口~清との別れ

第2章 到着
明治38年9月4日月曜~9月5日火曜)

1回
 松山初日に清の夢を見た
(9月4日月曜~9月5日火曜)
港屋で中学校の行き方を尋く~山城屋~港の鼻たれ小僧や宿の客引きや女中にも馬鹿にされる~階段下の部屋で1泊目

2回 教員控所で1人ずつ辞令を見せた
(9月5日火曜)
校長にいきなり辞令返上~全員に渾名を付けて遣った~狸・赤シャツ・うらなり・山嵐・漢学の爺さん・野だいこ

3回 早速清へ手紙を書く
(9月5日火曜)
授業は明後日から~階段下の部屋から大座敷へ~清への手紙~山嵐の急襲~いか銀へ宿替え~女房はウィッチに似ている

第3章 教室
明治38年9月7日木曜~9月24日日曜)

1回 まちっとゆるゆる遣っておくれんかなもし
(9月7日木曜)
最初の授業~あまり早くて分からんけれ~出来ん出来ん~お茶を淹れに来る宿の主人

2回 おい天麩羅を持って来い
(9月8日金曜~9月14日木曜)
骨董責め~其うち学校もいやになった~散歩中に蕎麦屋を見つけた~天麩羅蕎麦4杯

3回 住田温泉には遊郭も公園も団子屋もある
(9月15日金曜~9月24日日曜)
天麩羅先生~天麩羅四杯但不可笑~天麩羅を食うと減らず口が~遊郭の団子~赤手拭~湯の中で泳ぐべからず

第4章 宿直事件
(明治38年9月25日月曜~9月26日火曜)

1回 宿直が無暗に出てあるくなんて不都合じゃないか
(9月25日月曜)
宿直当番の夕~汽車で温泉へ行く~なるべくゆっくり時間を潰す~停車場で狸と会う~横丁で山嵐と会う

2回 そりゃイナゴぞなもし
(9月25日月曜)
バッタ事件~詰問~イナゴのせいにして白を切る生徒~清の有難味がよく分かる

3回 世の中に正直が勝たないで外に勝つものがあるか
(9月25日月曜~9月26日火曜)
咄喊事件~夢ではない~2階へ突撃~罠で向う脛を負傷~籠城覚悟~つい寝てしまう~詰問Ⅱ~校長登場~蚊に食われ顔中腫れる

第5章 ターナー
明治38年9月29日金曜)

1回 ひろびろとした海の上で潮風に吹かれるのは薬だと思った
(9月29日金曜)
赤シャツ野だと課業後沖釣りへ~鮪の二匹や三匹~ターナー島の景色~マドンナとは何か

2回 清を連れてこんな美しい所へ遊びに来たい
(9月29日金曜)
沖釣りは錘と糸と針だけ~鰹の一匹くらい~一番槍でゴルキを釣るが胴の間に叩きつけたら死んでしまった~赤シャツと野だもゴルキばかり~寝ころんで空を見ながら清のことを考える~山嵐を讒訴するような赤シャツと野だの内緒話

3回 さあ君は率直だからまだ経験に乏しいと云うんですがね
(9月29日金曜)
山嵐に気を付けろという謎かけ~赤シャツのアドバイス坊っちゃんの書生論

第6章 職員会議
明治38年9月29日金曜~9月30日土曜)

1回 君は学校に騒動を起すつもりで来たんじゃなかろう
(9月29日金曜~9月30日土曜)
赤シャツは弱虫に極まっている~弱虫は(女のように)親切なもの~山嵐には氷水の1銭5厘返しておこう~坊っちゃんは膏っ手~昨日は失敬迷惑でしたろう~これから山嵐と談判するつもり~君そんな無法をしちゃ困る~君大丈夫かい

2回 山嵐との大喧嘩
(9月30日土曜)
おや山嵐の癖にどこ迄も奢る気だな~氷水の代は受け取るが下宿は出て呉れ~下宿料の十円や十五円は懸物を一幅売りゃすぐ浮いてくるって云ってたぜ

3回 職員会議の午後
(9月30日土曜)
校長とは煮え切らない愚図の異名~山嵐の顔は小日向の養源寺にある韋駄天の絵に似ている~うらなり君の遅刻~狸の挨拶は謝罪から~すべては自分の寡徳の致す所

4回 私は徹頭徹尾反対です。そんな頓珍漢な処分は大嫌いです
(9月30日土曜)
沈黙の会議室~赤シャツの長談義~野だの阿諛追従~坊っちゃんの発言に一同失笑~流れは教頭派に

5回 山嵐吠える
(9月30日土曜)
山嵐がおれの言いたいことを全部言ってくれた~宿直中に温泉へ行ったことも追加で指摘された~坊っちゃんの謝罪に一同また失笑~最後に大失言「マドンナに逢うのも精神的娯楽ですか」

漱石「最後の挨拶」道草篇 45

419.『猫』下編目次――太平の逸民全員集合


第10篇 艶書事件
(1)則天去私
主人・細君・御三・とん子・すん子・坊ば・俥屋の子供・車夫

 人間も返事がうるさくなる位無精になるとどことなく趣きがあるが、こんな人に限って女に好かれた試しがない/主人の朝寝坊/三姉妹の洗顔/「そんなに言わなくても今起きる」と夜着の袖口から答えたのは奇観である/主人は押入れに逆さに貼ってある古新聞を読む/伝通院の尼事件~今泣いた烏がもう笑った/長火鉢事件/三姉妹の容貌/三姉妹の朝食/主人は一言もいわずに専心自分の飯を食い自分の汁を飲む/今に三人が申し合わせたように情夫を拵えて出奔しても、やはり自分の飯を食って自分の汁を飲んで澄まして見ているだろう/主人は日曜日なのに学校へ欠勤届を出して日本堤の警察署へ出頭する

(2)雪江登場
雪江・細君・とん子・すん子・坊ば

 雪江来たる/主人の悪口「蒟蒻閻魔」「天探女」/ただ怒るばかりじゃないのよ、人が右といえば左、左といえば右で、何でも人の言う通りにしたことがない/保険不要論「いえ決して死なない、誓って死なない」/淑徳婦人会で八木独仙の演説会があった/石地蔵と馬鹿竹の話/人間は魂胆があればあるほど、その魂胆が祟って不幸の源をなす/演説会には金田富子も来ていた/雪江は富子の噂をする~お化粧をするが器量は並である・東風が新体詩を捧げた・誰かから艶書が来た・寒月と結婚するらしい/招魂社嫁入事件~かように三人が顔を揃えて招魂社へ嫁に行けたら主人もさぞ楽であろう

(3)盗品還る
主人・細君・雪江

 主人の帰宅「やあ来たね」/盗品は山の芋と帯の片側以外は出て来た、みな解いて洗い張りしてある/(保険に)ぜひ来月から這入るんだ/雪江がいらないと言った蝙蝠傘をそれなら返せと言う/「お前は愚物のくせにやに強情だよ、それだから落第するんだ」「落第したって叔父さんに学資は出してもらやしないわ」/雪江の涙

(4)艶書事件
主人・古井武右衛門・寒月・細君・雪江

 大きな毬栗頭の生徒が来訪/「さあお敷き」/艶書事件/金田富子への付け文に名前を貸した生徒はしょげ切っているが主人は一向気にする様子はない/寒月来たる/上野の森へ虎の鳴き声を聞きに行こうという/主人の家の新聞は読売新聞であった/古井武右衛門は埒が明かないので帰ることにする「帰るかい」/コロンバスの邦訳/「だって君が貰うかも知れない人だぜ」「貰うかも知れないから構わないんです、なあに金田なんか構やしません」/寒月は近日中にちょっと用事で郷里に帰るという

第11篇 太平の逸民全員集合
(1)全員揃った太平の逸民
迷亭・独仙・主人・寒月・東風

 迷亭と独仙の囲碁/「迷亭君、君の囲碁は乱暴だよ、そんな所へ這入ってくる法はない」/寒月の国の土産は三本の鰹節/鰹節はヴァイオリンと一緒の袋に入れていたが鼠が両方とも齧ってしまった/「こっちは…こっちはこっちはとて暮れにけりと、どうもいい手がないね、君もう一遍打たしてやるから勝手な所へ一目打ちたまえ」/主人の女性不要論~独仙も寒月も東風も反対/東風「僕の考えでは人間が絶対の域に入るにはただ二つの道があるばかりで、それは芸術と恋だ、夫婦の愛はその一つを代表するものだ」

(2)寒月のヴァイオリン購入事件
迷亭・独仙・寒月・主人・東風

 寒月が田舎の高等学校でいかにしてヴァイオリンを購入するに至ったか/見つかれば生意気だというのですぐ殴られる/人目につくので夜まで待つ/主人「おいもうヴァイオリンを買ったかい」東風「これから買うところです」/買ったヴァイオリンの置き場所に窮して下宿の古つづらの中へ隠す/羅甸語は分かってるが何と読むんだい~無論読めるさ、読めることは読めるが、こりゃ何だい

(3)ヴァイオリン試奏未遂事件と寒月の結婚
寒月・迷亭・東風・主人・独仙

「先生子規さんとは御つき合いでしたか」「なにつき合わなくっても始終無線電信で肝胆相照らしていたもんだ」/味醂盗飲事件~昔鈴木藤十郎味醂迷亭や主人が飲んでしまった~黙っていろ、羅甸語も読めないくせに~大将(苦沙弥)部屋の隅の方に朱泥を練りかためた人形のようにかたくなっていらあね/迷亭の煙草盗飲事件「失礼ですがこんな粗葉でよろしければどうぞお呑み下さいまし」/
寒月は買ったヴァイオリンを弾く場所がない/深夜灯りも点けず山へ行ってみる/総身の毛穴が急にあいて焼酎を吹きかけた毛脛のように勇気・胆力・分別・沈着などと号する御客様がすうすうと蒸発して行く、心臓が肋骨の下でステテコを踊り出す、両足が紙鳶のうなりように震動をはじめる/何だか君の話は物足りないような気がする/
 博士ならもうならなくてってもいいんです/寒月は国へ帰って結婚していた/どうせ夫婦なんてものは闇の中で鉢合せするようなものだ、鉢合せしないでも済むところをわざわざ鉢合せるんだから余計な事さ、それなら誰と誰の鉢が合ったって構いっこないよ/(金田の方へ)いいえ断る訳がありません、私の方でくれとも貰いたいとも先方へ申し込んだ事はありませんから黙っていれば沢山です

(4)文明の果ての自殺クラブ
主人・独仙・迷亭・寒月・東風

 人から金品を奪うのが掏摸・泥棒・強盗だが、人から心を奪うものが探偵である/僕の解釈によると当世人の探偵的傾向は全く個人の自覚心の強過ぎるのが原因になっている/泥棒は捕まるか見付かるかという心配が念頭を離れる事がない~探偵は人の目を掠めて自分だけうまい事をしようという商売である~いずれも自覚心が強くならざるを得ない/一挙手一投足も自然天然とは出来ない~瞬時も自己を忘れる事が出来ない~行為言動が人工的にコセつくばかり~己れの損得ばかり考え続けて死ぬまで一刻の安心も得ない/
 二十世紀の人間はたいてい探偵のようになる傾向がある/二六時中己れという意識を以て充満しているから二六時中太平の時はない/天下に何が薬だといって己れを忘れるより薬な事はない/印度の王族の馬鈴薯手掴み事件~英国の下士官フィンガーボール事件~カーライル着座事件/

 死ぬ事は苦しい、しかし死ぬ事が出来なければなお苦しい/主人の人類皆自殺論/自殺できない人は巡査が撲殺して歩く/月賦販売のよる詐欺的金儲け論/しかし親子兄弟の離れたる今日もう離れるものはないわけだから最後の方案として夫婦が分れることになる/東風「先生私はその説には全然反対です、世の中に何が尊いといって愛と美ほど尊いものはない」/「芸術だって夫婦と同じ運命に帰着するのさ、個性の発展というのは個性の自由という意味だろう、個性の自由という意味は己れは己れ人は人という意味だろう、その芸術なんか存在出来るわけがない」/昔は孔子がたった一人だったから孔子も幅を利かしたのだが今は孔子が幾人もいる/吾人は自由を得た、自由を得た結果不自由を感じて困っている

(5)最後の事件
主人・迷亭・独仙・寒月・東風・細君・多々良三平

 古代ギリシャの女の悪口/多々良三平来訪/多々良三平は金田富子と婚約したという/寒月は自分のことを「多妻主義ではないが肉食論者だ」という/多々良三平は前祝いにビールを持参、皆で飲む/吾輩も残ったビールを舐めて陶然となる/つい油断して夏に烏が来て行水をしていた大きな甕の中に落ちる/「もうよそう、勝手にするがいい、がりがりはこれぎり御免被るよ」と前足も後足も頭も尾も自然の力に任せて抵抗しない事にした(完)