明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

漱石「最後の挨拶」草枕篇 8

304.『草枕』幻の最終作品(2)――主人公は芸術家 『三四郎』以降の新聞小説を3部作のセットとして捉え、そのため『道草』『明暗』に続く「幻の最終作品」が構想されていた筈である、というのが前著(『明暗』に向かって)の主張の1つである。さてその幻の…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 7

303.『草枕』幻の最終作品(1)――3部作の秘密 さて本ブログは、Ⅰ 青春3部作(『三四郎M41』『それからM42』『門M43』)Ⅱ 中期3部作(『彼岸過迄M45』『行人T2』『心T3』) を順に取扱ったあと、最後の作品群に移る前に、『坊っちゃん』『草枕』(おそら…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 6

302.『草枕』降臨する神々(6)――消えろ消えろ束の間のともしび そして調子に乗ってもう1つ、『趣味の遺伝』の中にある漱石のマクベス論について言及した記念として、論者の生涯で最も記憶に残るマクベスの名が語られた場面を紹介したい。それは堤重久の『…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 5

301.『草枕』降臨する神々(5)――『趣味の遺伝』の実相 マクベスが出て来るようでは何人も黙って引き下がるしかないのだが、ここで『趣味の遺伝』の筋書きをまとめれば、①ある日浩さんが本郷郵便局で令嬢を見染めた。②令嬢も密かに感応したがピュアな浩さん…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 4

300.『草枕』降臨する神々(4)――『趣味の遺伝』とマクベス とは言っても、『趣味の遺伝』の書き足りない部分というのは、やはり気になる。創作の意図は(余計なお世話だから)問わないにしても、漱石があの物語の結構をどのように考えていたかは、探ってみ…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 3

299.『草枕』降臨する神々(3)――『趣味の遺伝』と『坊っちゃん』 明治38年に書かれた『一夜』と明治39年の金字塔『草枕』に関連して、同じように明治38年(12月)に書かれた『趣味の遺伝』と明治39年の国民的名作『坊っちゃん』の関係が類推され…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 2

298.『草枕』降臨する神々(2)――『一夜』との関係 『坊っちゃん』といえば『草枕』であるが、『草枕』の価値についても多言を要しない。それらの製作時期を掲げるだけで充分計り知ることが可能である。明治38年1月号 『猫』第1篇「吾輩は猫である」明…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 1

297.『草枕』降臨する神々(1)――不惑の詩人 「正岡子規三十六、尾崎紅葉三十七、斎藤緑雨三十八、国木田独歩三十八、長塚節三十七、芥川龍之介三十六、嘉村礒多三十七。」 これは昭和19年、有名な太宰治『津軽』の書き出しであるが、この顰に倣えば太宰…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 40

296.『坊っちゃん』 ブログ総目次 ブログ総目次坊っちゃん篇1 257.『坊っちゃん』日本で一番有名な小説(1)――ライバルは『心』と『破戒』漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 1 - 明石吟平の漱石ブログ 坊っちゃん篇2 258.『坊っちゃん』日本で一番有名な小…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 39

295.『坊っちゃん』全45回詳細目次――カレンダー付 第1章 坊っちゃん (全5回) (明治16年~明治38年/明治38年8月31日木曜~9月2日土曜)1回 親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る(明治16年1歳~明治28年13歳)(P249-5/…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 38

294.『坊っちゃん』全45回詳細目次――カレンダーなし 先にも断った通り回数分けやそのタイトルは勝手に付けたものである。回数分けのガイドとなる頁の表示は、岩波書店版『定本漱石』第2巻(2017年1月初版)に拠った。第1章 坊っちゃん (全5回) 1回 …

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 37

293.『坊っちゃん』全45回目次――カレンダー付 第1章 坊っちゃん (全5回)(明治16年~明治38年/明治38年8月31日木曜~9月2日土曜) 1回 親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る(明治16年1歳~明治28年13歳) 2回 こいつは…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 36

292.『坊っちゃん』全45回目次――カレンダーなし 第1章 坊っちゃん (全5回) 1回 親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る2回 こいつはどうせ碌なものにはならない3回 母が死んでから清は愈おれを可愛がった4回 六百円の使用法に就て寝ながら…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 35

291.『坊っちゃん』むすびに代えて――「おれ」と「私」の秘密 宇宙船ともいえる漱石文学の航路に、限りない可能性を残して『坊っちゃん』は閉じられたが、それで本ブログ冒頭の宿題、以前の項(第19項)でも触れた『坊っちゃん』と『心』の共通点の話である…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 34

290.『坊っちゃん』1日1回(12)――坊っちゃん最初で最後の嘘 第11章 天誅 (全6回)(つづき)(明治38年10月24日火曜~11月10日金曜/明治38年11月~明治39年3月)6回 野だに貴様も沢山かと聞いたら無論沢山だと答えた(11月9…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 33

289.『坊っちゃん』1日1回(11)――月齢が語る天誅の晨 第11章 天誅 (全6回)(明治38年10月24日火曜~11月10日金曜/明治38年11月~明治39年3月)1回 今朝の新聞を御見たかなもし(10月24日火曜)(P382-3/あくる日眼が覚め…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 32

288.『坊っちゃん』1日1回(10)――坊っちゃん最後の事件 第10章 祝勝会の夜 (全4回)(明治38年10月23日月曜)1回 祝勝会に生徒を引率(10月23日月曜)(P368-8/祝勝会で学校は御休みだ)こんな奴等と一緒では人間が堕落するばかり~早…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 31

287.『坊っちゃん』1日1回(9)――先生たちも寄宿舎の生徒に負けていない 第9章 送別会の夜 (全4回)(明治38年10月16日月曜)1回 坊っちゃんの下宿で送別会の打合せ(10月16日月曜)(P353-12/うらなり君の送別会のある)山嵐の謝罪~1銭…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 30

286.『坊っちゃん』1日1回(8)――赤シャツと漱石完全一致 第8章 赤シャツ (全4回)(明治38年10月10日火曜~10月13日金曜)1回 赤シャツと山嵐(10月10日火曜~10月13日金曜)(P340-3/赤シャツに勧められて釣に)いいえ僕はあっ…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 29

285.『坊っちゃん』1日1回(7)――マドンナ野芹川の夜の遭難 第7章 マドンナ (全5回)(明治38年9月30日土曜~10月9日月曜)1回 萩野の家へ宿替え(9月30日土曜~10月6日金曜)(P322-6/おれは則夜下宿を引き払った)いか銀の女房の狼…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 28

284.『坊っちゃん』1日1回(6)――土曜日午後の職員会議 第6章 職員会議 (全5回)(明治38年9月29日金曜~9月30日土曜)1回 君は学校に騒動を起すつもりで来たんじゃなかろう(9月29日金曜~9月30日土曜)(P304-15/野だは大嫌だ。こん…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 27

283.『坊っちゃん』1日1回(5)――日本一有名な無人島 第5章 ターナー島 (全3回)(明治38年9月29日金曜)1回 ひろびろとした海の上で潮風に吹かれるのは薬だと思った(9月29日金曜)(P292-6/君釣りに行きませんか)赤シャツ野だと課業後沖…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 26

282.『坊っちゃん』1日1回(4)――赤シャツも漱石も宿直免除 第4章 宿直事件 (全3回)(明治38年9月25日月曜~9月26日火曜)1回 宿直が無暗に出てあるくなんて不都合じゃないか(9月25日月曜)(P280-3/学校には宿直があって)宿直当番の…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 25

281.『坊っちゃん』1日1回(3)――記念すべき最初の松山弁 第3章 教室 (全3回)(明治38年9月7日木曜~9月24日日曜)1回 まちっとゆるゆる遣っておくれんかなもし(9月7日木曜)(P270-13/愈学校へ出た)最初の授業~あまり早くて分からんけ…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 24

280.『坊っちゃん』1日1回(2)――芋が剥き出しになっている 第2章 到着 (全3回)(明治38年9月4日月曜~9月5日火曜)1回 松山初日に清の夢を見た(9月4日月曜~9月5日火曜)(P261-6/ぶうと云って汽船がとまると)港屋で中学校の行き方を…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 23

279.『坊っちゃん』1日1回(1)――勘太郎ふたたび 恒例により『坊っちゃん』に目次を付けてみる。幸いにも『坊っちゃん』は11に章分けされている。これは『三四郎』13、『それから』17、『門』23に比べてどうか。1章あたりのページ数という観点か…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 22

278.『坊っちゃん』怒りの日々(5)――カレンダーは破綻するのか 漱石に日曜日という語の出て来ない小説は無いと言えるが、その例外の代表格たる『草枕』は、全体が課業休暇中(春休み)のような小説である。 ところが『坊っちゃん』でも、主人公が中学校教…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 21

277.『坊っちゃん』怒りの日々(4)――お金と数字のマジック 愛と生そして死。書出しの1字たる「親」。漱石文学のキーワードはこれだけにとどまらない。 金と女。漱石の小説は金と女の話であるといって過言でない。 この世に女について書かれない小説は無い…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 20

276.『坊っちゃん』怒りの日々(3)――書出しの1文字は「親」である 『坊っちゃん』の書出しの1文字は、厳密に言うと、どの本も章番号を表わす「一」であるが、漱石は「一」とは書いていない。章の番号を書き始めるのは「二」からである。『坊っちゃん』に…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 19

275.『坊っちゃん』怒りの日々(2)――怒りの裏側には「おれ」がいる その2つの詩的情景のうちの1つ目の、誰もが認めるターナー島の描写であるが、そのターナー島なるものを始めて世に紹介しようとするくだりからして、すでに美しい。 船頭はゆっくりゆっ…