2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧
71.『それから』愛は3回語られる(3)――果てしなき道(つづき) ここで『それから』の本題からは外れるかも知れないが、漱石の描く男と女の愛情の交流について、そのイベントなり要素が漱石によって(外形的に)どのように書かれているか、順に追ってみた…
70.『それから』愛は3回語られる(2)――果てしなき道 三題噺というものがある。三種の神器というものもある。前項の話は『それから』だけに仕掛けられたトリックであろうか。単なる偶然であろうか。 『三四郎』で露骨に描かれた「恋愛譚」が一つだけある。…
69.『それから』愛は3回語られる(1)――漱石作品唯一のプロポーズ 漱石の全作品の中で『それから』が独り聳え立っているところが一つある。それは主人公が女に直接愛を告白したことである。前著でも述べたが、男が女に直接プロポーズするのは代助が最初で…
68.『それから』年表(2)――真の問題点 論者は先に『三四郎』の本文改訂案としていくつか挙げたが、おもむきは異なるが、『それから』でも、改めて本文改訂を提案したい。誤 代助が三千代と知り合になったのは、今から四五年前の事で、(7ノ2回冒頭) 正 …
67.『それから』年表(1)――結婚は最初から破綻していた 『それから』の物語の今現在は、前述のように明治42年で問題ない。そこで『それから』のおおよその年表を作ってみる。代助たちの大学入学から、三千代の上京、菅沼の急死、卒業、結婚、転勤、そし…
66.『それから』内容見本(2)――2ノ1回全文引用(つづき) (前項よりつづき) ⑨ 物語は(『三四郎』と違って)高等商業の学校騒動、『煤煙』、日糖事件等の記述から、明治42年以外の何物でもないことが分かるが、平岡の上京の季節もまた明示されている…
65.『それから』内容見本(1)――2ノ1回全文引用 いきなり大きく構えてしまったので、次は反対に本文に即して細かい観察を試みることにする。見本として、2ノ1回を採り上げる。 青色で示した引用本文は、「三四郎篇」同様岩波書店版の漱石全集(初版1994…
64.『それから』はじめに――『それから』最大の謎 『三四郎』の野々宮君(野々宮さん)と広田先生を最後に、漱石作品から君さん付けは姿を消した。漱石は真顔になったと言うべきか。真に職業作家になったと言うべきか。あるいは余裕がなくなってつまらなくな…
63.山田風太郎の「あげあしとり」(3)――国民作家吉川英治 [漱石「最後の挨拶」番外篇] さて吉川英治はいつもこんな(危ない橋を渡るような)書き方をしているのだろうか。「宮本武蔵」全7巻の内の第1巻「地の巻」の「縛り笛」の章に、早くもこんな記述…
62.山田風太郎の「あげあしとり」(2)――風太郎の勘違い [漱石「最後の挨拶」番外篇] もう一度山田風太郎の指摘する箇所を、「吉川英治全集」(講談社昭和43年初版)から直接引いてみる。山田風太郎が引用した部分は重ねてボールドで示す。 なお、前項で…
61.山田風太郎の「あげあしとり」(1)――武蔵の勘違い [漱石「最後の挨拶」番外篇] 論者は前著で、山田風太郎の「あげあしとり」(『推理』昭和47年)という短文について、「全文引用したい誘惑にかられる」と書いたが(先の第58項でも重ねて書いた)、…
60.『明暗』に向かって 漱石作品最大の謎――須永の母はなぜ市蔵を一人で返したか [漱石「最後の挨拶」番外篇] 前著で論者は「漱石作品最大の誤植」で、夏目鏡子の『思い出』の百年放置された誤植問題を追及した。小論でも先にそれを再掲載して訴えた。単行…
59.『明暗』に向かって お延「女下駄」事件(2)――お延の勘違い(つづき) [漱石「最後の挨拶」番外篇] 16.お延「女下駄」事件(承前)―― お延の勘違い 津田がお時を追い払ったあとも、津田とお秀のバトルは留まるところを知らない。 そして「……彼は何…
58.『明暗』に向かって お延「女下駄」事件(1)――お延の勘違い [漱石「最後の挨拶」番外篇] もう少しだけ前著(『明暗』に向かって)からの「引用」をお許しいただきたい。 各種の全集本や文庫本の『明暗』のどれを見ても、この漱石の「錯誤」について指…
57.『明暗』に向かって 「はじめに」(3)――三部作の秘密 [漱石「最後の挨拶」番外篇] Ⅰ 初期三部作(『三四郎』『それから』『門』) Ⅱ 中期三部作(『彼岸過迄』『行人』『心』) Ⅲ 晩期三部作(『道草』『明暗』『(書かれなかった最後の小説)』) 改…
56.『明暗』に向かって 「はじめに」(2)――漱石幻の最終作品 [漱石「最後の挨拶」番外篇] 漱石の三部作といえばまず『三四郎』『それから』『門』というのが定番だが、続く『彼岸過迄』『行人』『心』も、短篇を並べて一箇の長篇にするという手際におい…
55.『明暗』に向かって 「はじめに」(1)――野上弥生子の『明暗』 [漱石「最後の挨拶」番外篇] 「『明暗』に向かって」には、かなりの長さの前書きが付いている。本体の論考とはほぼ無関係の、それこそ「番外篇」のような記事であるが、そのため単独で読…
54.『明暗』に向かって 「目次」注解 [漱石「最後の挨拶」番外篇] 前著61項400頁は、論考の当否はともかく、難解なところはどこにもない。 目次に書いたのは、本文の小見出し等ではなく、本文の内容のダイジェストを、少し惹句ふうにアレンジしたもの…
53.『明暗』に向かって 目次(4) [漱石「最後の挨拶」番外篇] (前項よりつづく) Ⅳ 珍野家の猫45.『猫』第1冊目次吾輩は猫である/太平の逸民/金田事件/鈴木藤十郎君(金田事件Ⅱ)/泥棒事件と多々良三平 46.『猫』第2冊目次夏来たる・太平の…
52.『明暗』に向かって 目次(3) [漱石「最後の挨拶」番外篇] (前項よりつづく) Ⅲ 棗色の研究31.お延「見上げる女」お延の初登場と二つの嘘/美禰子の初登場と年上の女/フラウ門に倚って待つ 32.お延「見上げる女」(承前)――『文鳥』と『永日…
51.『明暗』に向かって 目次(2) [漱石「最後の挨拶」番外篇] (前項よりつづく) Ⅱ 小石川の谷(と台地)15.お延「女下駄」事件山田風太郎の「あげあしとり」/小林の外套事件/お時によって語られていたお秀の病院来訪 16.お延「女下駄」事件(…
50.『明暗』に向かって 目次(1) [漱石「最後の挨拶」番外篇] 恐縮ついでに「『明暗』に向かって」の「目次」を紹介したい。同書は前書き以外に61の項から成る。全61項は便宜的に Ⅰ 四つの改訂Ⅱ 小石川の谷(と台地)Ⅲ 棗色の研究Ⅳ 珍野家の猫 の4…
49.『明暗』に向かって 正誤表 [漱石「最後の挨拶」番外篇] 前述したが論者(筆者)は2020年2月に東京図書出版より「『明暗』に向かって」を自費出版した。500部作って半分くらい売れた(半分くらいしか売れなかった)ようである。 ここで大変恐縮…
48. 『三四郎』外伝(3)――「だろうじゃないか」 こんなことをいつまで書いても仕様がないが、最後にもう1つだけ、精養軒での文芸家の懇親会での原口の発言。「そう云う自然派なら、文学の方でも結構でしょう。原口さん、画の方でも自然派がありますか」と…
47.『三四郎』外伝(2)――「のだね」と「だもの」 三四郎の「悪い」という告発の尻馬に乗るわけではないが、ここで漱石の良くない文例について、もちろん論者の個人的な好悪の中での話になるが、一応言うだけは言っておきたい。 それは最初『三四郎』の中で…