明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

それから

漱石「最後の挨拶」それから篇 補遺

121.『それから』 ブログ総目次 ここで「門篇』全37回の前の「それから篇」全20回(総目次込で全21回)にも、遅ればせながら総目次を附さねばならない。漱石「最後の挨拶」それから篇 それから篇1 64.『それから』はじめに――『それから』最大の謎漱石…

漱石「最後の挨拶」それから篇 23

86.『それから』結婚話を断ってもいけない ~『明暗』に向かって(第11項) 《漱石「最後の挨拶」番外篇》 (前項よりつづく) 11.結婚話を断ってもいけない『行人』の二郎は三沢に呼び出され、歌舞伎座ならぬ雅楽所で三沢の許嫁の親友という女を紹介される…

漱石「最後の挨拶」それから篇 22

85.『それから』見合いを断ってはいけない ~『明暗』に向かって(第10項) 《漱石「最後の挨拶」番外篇》 『それから』篇の終わりにあたって、内容は一部重複するが、再び前著(『明暗』に向かって)からの引用を以って補足としたい。引用文冒頭のお見合いと…

漱石「最後の挨拶」それから篇 21

84.『それから』告白がもたらす平和と嵐(2)――もう尻に敷かれている とまれ告白はなされたのであるから、賽は投げられたのであるから、もう他からとやかく言うこともないのである。 しかしこの期に及んでもいろいろ考えさせられるのが漱石の小説であろう。…

漱石「最後の挨拶」それから篇 20

83.『それから』告白がもたらす平和と嵐(1)――繰り返し奏されるトリオ さて『それから』全110回のカタログを作成してみると、改めて第14章(全11回)が最も長く、ハイライトの章であることが再確認される。漱石作品最初で最後の「直接告白」の含ま…

漱石「最後の挨拶」それから篇 19

82.『それから』目次(2)―― 第10章~第17章(ドラフト版) (前項よりつづき) 第10章 三千代2度目の来訪 6月(門野・三千代)(父・平岡)1回 代助の不安はどこから来るか2回 午睡の最中に三千代が来る3回 人の細君を待ち合わせるには理論が必…

漱石「最後の挨拶」それから篇 18

81.『それから』目次(1)―― 第1章~第9章(ドラフト版) 『それから』は漱石によって1から17に分割されているが、小論ではそれをそのまま1章から17章とし、その簡単な概要を新聞掲載回と共に掲げることにする。また章ごとに代助以外の登場人物を(…

漱石「最後の挨拶」それから篇 17

80.『それから』ミステリツアー(2)――二つの誤記事件 《漱石「最後の挨拶」番外篇》20.『それから』ミステリツアー(承前) 以上のように『明暗』と『それから』を比べてみて、固有名詞が書かれようが書かれまいが、漱石の場合はその小説世界の現実感に…

漱石「最後の挨拶」それから篇 16

79.『それから』ミステリツアー(1)―― 四つの橋 《漱石「最後の挨拶」番外篇》『それから』については前著(『明暗』に向かって)でもいくつか述べたことがある。というのは『それから』も『明暗』も、主人公たちが牛込から小石川、神田界隈まで、似たよう…

漱石「最後の挨拶」それから篇 15

78.『それから』父と子――金がなければ役立たず 先に『それから』では父が(例外的に)活動すると述べたが、漱石にとって人生では苦々しい存在でしかなかった父親が、作品でどのように描かれたか、例によって順に見てみよう。『猫』 吾輩の父親は当然ながら不…

漱石「最後の挨拶」それから篇 11

74.『それから』愛は3回語られる(6)――女と金と死が必ず語られる(つづき) (前項よりつづき) 『門』 ①宗助の弟2人(早世) ②妹(夭折)(宗助10歳頃) ③母(宗助20歳頃) ④父(宗助26歳頃) ⑤御米の児3人(*) ⑥佐伯の叔父 ⑦伊藤博文 ⑧弁慶橋の…

漱石「最後の挨拶」それから篇 10

73.『それから』愛は3回語られる(5)――女と金と死が必ず語られる 漱石作品には女と金の話が必ず出て来るが、死もまた必ず語られる。ここで漱石作品に現れる死者の数を順に数えてみよう。もちろん金の話と同じで、厳密にカウントするのは不可能にちかいが…

漱石「最後の挨拶」それから篇 9

72.『それから』愛は3回語られる(4)――『心』からの再出発 『行人』については先に例を挙げたが、『行人』には「塵労」という(病気による中断の後の)オマケの物語がある。結局二郎の友人三沢は婚約することになったが、三沢にとっては小説の中では3人…

漱石「最後の挨拶」それから篇 8

71.『それから』愛は3回語られる(3)――果てしなき道(つづき) ここで『それから』の本題からは外れるかも知れないが、漱石の描く男と女の愛情の交流について、そのイベントなり要素が漱石によって(外形的に)どのように書かれているか、順に追ってみた…

漱石「最後の挨拶」それから篇 7

70.『それから』愛は3回語られる(2)――果てしなき道 三題噺というものがある。三種の神器というものもある。前項の話は『それから』だけに仕掛けられたトリックであろうか。単なる偶然であろうか。 『三四郎』で露骨に描かれた「恋愛譚」が一つだけある。…

漱石「最後の挨拶」それから篇 6

69.『それから』愛は3回語られる(1)――漱石作品唯一のプロポーズ 漱石の全作品の中で『それから』が独り聳え立っているところが一つある。それは主人公が女に直接愛を告白したことである。前著でも述べたが、男が女に直接プロポーズするのは代助が最初で…

漱石「最後の挨拶」それから篇 5

68.『それから』年表(2)――真の問題点 論者は先に『三四郎』の本文改訂案としていくつか挙げたが、おもむきは異なるが、『それから』でも、改めて本文改訂を提案したい。誤 代助が三千代と知り合になったのは、今から四五年前の事で、(7ノ2回冒頭) 正 …

漱石「最後の挨拶」それから篇 4

67.『それから』年表(1)――結婚は最初から破綻していた 『それから』の物語の今現在は、前述のように明治42年で問題ない。そこで『それから』のおおよその年表を作ってみる。代助たちの大学入学から、三千代の上京、菅沼の急死、卒業、結婚、転勤、そし…

漱石「最後の挨拶」それから篇 3

66.『それから』内容見本(2)――2ノ1回全文引用(つづき) (前項よりつづき) ⑨ 物語は(『三四郎』と違って)高等商業の学校騒動、『煤煙』、日糖事件等の記述から、明治42年以外の何物でもないことが分かるが、平岡の上京の季節もまた明示されている…

漱石「最後の挨拶」それから篇 2

65.『それから』内容見本(1)――2ノ1回全文引用 いきなり大きく構えてしまったので、次は反対に本文に即して細かい観察を試みることにする。見本として、2ノ1回を採り上げる。 青色で示した引用本文は、「三四郎篇」同様岩波書店版の漱石全集(初版1994…

漱石「最後の挨拶」それから篇 1

64.『それから』はじめに――『それから』最大の謎 『三四郎』の野々宮君(野々宮さん)と広田先生を最後に、漱石作品から君さん付けは姿を消した。漱石は真顔になったと言うべきか。真に職業作家になったと言うべきか。あるいは余裕がなくなってつまらなくな…