明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

『明暗』に向かって

漱石「最後の挨拶」番外篇続々

山田風太郎の「あげあしとり」(3)――国民作家吉川英治(再掲) さて吉川英治はいつもこんな(危ない橋を渡るような)書き方をしているのだろうか。「宮本武蔵」全7巻の内の第1巻「地の巻」の「縛り笛」の章に、早くもこんな記述がある。(引用は前項と同…

漱石「最後の挨拶」番外篇続

山田風太郎の「あげあしとり」(2)――風太郎の勘違い(再掲) もう一度山田風太郎の指摘する箇所を、「吉川英治全集」(講談社昭和43年初版)から直接引いてみる。山田風太郎が引用した部分は重ねてボールドで示す。 なお、前項で紹介した山田風太郎の「あ…

漱石「最後の挨拶」番外篇

さて本ブログも開始して1年経った。本ブログには原則として生者は登場しないが、ここで御盆休みということで、「行人篇」を一時中断して、去年(10月)番外篇として3回分書いた「山田風太郎のあげあしとり」という記事を、本日より3日間、(山田風太郎の…

山田風太郎の「あげあしとり」 2

62.山田風太郎の「あげあしとり」(2)――風太郎の勘違い [漱石「最後の挨拶」番外篇] もう一度山田風太郎の指摘する箇所を、「吉川英治全集」(講談社昭和43年初版)から直接引いてみる。山田風太郎が引用した部分は重ねてボールドで示す。 なお、前項で…

山田風太郎の「あげあしとり」 1

61.山田風太郎の「あげあしとり」(1)――武蔵の勘違い [漱石「最後の挨拶」番外篇] 論者は前著で、山田風太郎の「あげあしとり」(『推理』昭和47年)という短文について、「全文引用したい誘惑にかられる」と書いたが(先の第58項でも重ねて書いた)、…

『明暗』に向かって 漱石作品最大の謎

60.『明暗』に向かって 漱石作品最大の謎――須永の母はなぜ市蔵を一人で返したか [漱石「最後の挨拶」番外篇] 前著で論者は「漱石作品最大の誤植」で、夏目鏡子の『思い出』の百年放置された誤植問題を追及した。小論でも先にそれを再掲載して訴えた。単行…

『明暗』に向かって お延「女下駄」事件 2

59.『明暗』に向かって お延「女下駄」事件(2)――お延の勘違い(つづき) [漱石「最後の挨拶」番外篇] 16.お延「女下駄」事件(承前)―― お延の勘違い 津田がお時を追い払ったあとも、津田とお秀のバトルは留まるところを知らない。 そして「……彼は何…

『明暗』に向かって お延「女下駄」事件 1

58.『明暗』に向かって お延「女下駄」事件(1)――お延の勘違い [漱石「最後の挨拶」番外篇] もう少しだけ前著(『明暗』に向かって)からの「引用」をお許しいただきたい。 各種の全集本や文庫本の『明暗』のどれを見ても、この漱石の「錯誤」について指…

『明暗』に向かって はじめに(3)

57.『明暗』に向かって 「はじめに」(3)――三部作の秘密 [漱石「最後の挨拶」番外篇] Ⅰ 初期三部作(『三四郎』『それから』『門』) Ⅱ 中期三部作(『彼岸過迄』『行人』『心』) Ⅲ 晩期三部作(『道草』『明暗』『(書かれなかった最後の小説)』) 改…

『明暗』に向かって はじめに(2)

56.『明暗』に向かって 「はじめに」(2)――漱石幻の最終作品 [漱石「最後の挨拶」番外篇] 漱石の三部作といえばまず『三四郎』『それから』『門』というのが定番だが、続く『彼岸過迄』『行人』『心』も、短篇を並べて一箇の長篇にするという手際におい…

『明暗』に向かって はじめに(1)

55.『明暗』に向かって 「はじめに」(1)――野上弥生子の『明暗』 [漱石「最後の挨拶」番外篇] 「『明暗』に向かって」には、かなりの長さの前書きが付いている。本体の論考とはほぼ無関係の、それこそ「番外篇」のような記事であるが、そのため単独で読…

『明暗』に向かって 「目次」注解

54.『明暗』に向かって 「目次」注解 [漱石「最後の挨拶」番外篇] 前著61項400頁は、論考の当否はともかく、難解なところはどこにもない。 目次に書いたのは、本文の小見出し等ではなく、本文の内容のダイジェストを、少し惹句ふうにアレンジしたもの…

『明暗』に向かって 目次 4

53.『明暗』に向かって 目次(4) [漱石「最後の挨拶」番外篇] (前項よりつづく) Ⅳ 珍野家の猫45.『猫』第1冊目次吾輩は猫である/太平の逸民/金田事件/鈴木藤十郎君(金田事件Ⅱ)/泥棒事件と多々良三平 46.『猫』第2冊目次夏来たる・太平の…

『明暗』に向かって 目次 3

52.『明暗』に向かって 目次(3) [漱石「最後の挨拶」番外篇] (前項よりつづく) Ⅲ 棗色の研究31.お延「見上げる女」お延の初登場と二つの嘘/美禰子の初登場と年上の女/フラウ門に倚って待つ 32.お延「見上げる女」(承前)――『文鳥』と『永日…

『明暗』に向かって 目次 2

51.『明暗』に向かって 目次(2) [漱石「最後の挨拶」番外篇] (前項よりつづく) Ⅱ 小石川の谷(と台地)15.お延「女下駄」事件山田風太郎の「あげあしとり」/小林の外套事件/お時によって語られていたお秀の病院来訪 16.お延「女下駄」事件(…

『明暗』に向かって 目次 1

50.『明暗』に向かって 目次(1) [漱石「最後の挨拶」番外篇] 恐縮ついでに「『明暗』に向かって」の「目次」を紹介したい。同書は前書き以外に61の項から成る。全61項は便宜的に Ⅰ 四つの改訂Ⅱ 小石川の谷(と台地)Ⅲ 棗色の研究Ⅳ 珍野家の猫 の4…

『明暗』に向かって 正誤表

49.『明暗』に向かって 正誤表 [漱石「最後の挨拶」番外篇] 前述したが論者(筆者)は2020年2月に東京図書出版より「『明暗』に向かって」を自費出版した。500部作って半分くらい売れた(半分くらいしか売れなかった)ようである。 ここで大変恐縮…

漱石最大の誤植 鏡子の『思い出』2

14. 漱石最大の誤植(2)―― 鏡子『思い出』と雛子の死(つづき) 〔番外篇2〕 漱石の五女雛子が夕食中に急死したのが明治44年11月29日。漱石はそのとき書斎で、元朝日にいたこともある中村古峡と面談中だった。 漱石が雛子の骨を拾ったのが12月3…

漱石最大の誤植 鏡子の『思い出』1

13. 漱石最大の誤植(1)―― 鏡子『思い出』と雛子の死 〔番外篇1〕 ここまで論者の書きぶりから、論者は主に漱石本の誤植について論じているのではないかと思われる向きもあるかも知れない。しかし誤植や誤記がいくらあったからといって、それは研究に値す…