明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

漱石「最後の挨拶」草枕篇 38

334.『草枕』全51回詳細目次(2)――第8章~第13章


第8章 隠居老人の茶席に招かれる(全4回)

1回 客は観海寺の大徹和尚と甥の久一
(P93-2/御茶の御馳走になる)
老人の部屋には支那の花毯が~和尚は虎の皮の敷物~久一は鏡が池で写生しているところを和尚に見つかったことがある

2回 老人の娘那美さんの噂話も出る
(P95-15/「杢兵衛はどうも偽物が多くて)
茶碗は杢兵衛~老人は画工が青磁の皿と羊羹を賞めたことを知っていた~サファイアルビーの菓子皿~那美さんは健脚

3回 端渓の硯と物徂徠の大幅
(P98-10/老人が紫檀の書架から、恭しく取り下した)
和尚も漱石も山陽が嫌い~徂徠の方がまし~九眼の端渓~松の皮の蓋を取ると

4回 久一は召集されることになった
(P102-5/もし此硯に付て人の眼を峙つべき特異の点が)
端渓の素晴らしさ~支那へ行けば買えるのか~日露戦争と久一の運命

第9章 那美さんに個人レッスン(全3回)

1回 非人情な小説の読み方
(P106-3/「御勉強ですか」と女が云う)
部屋で那美さんと語る~画工は洋書を読んでいた~何ならあなたに惚れこんでもいい~惚れても夫婦にならないのが非人情な惚れ方

2回 メレディスの小説を日本語に直しながら読む
(P110-3/これも一興だろうと思ったから)
普通の小説はみんな探偵が発明したものですよ~非人情な所がないから些とも趣がない~地震!~非人情ですよ

3回 画工と那美さん一触即発
(P113-14/岩の凹みに湛えた春の水が、驚ろいて)
振袖披露は画工のための親切心~「見たいと仰ゃったからわざわざ見せて上げたんじゃありませんか」「何か御褒美を頂戴」~久一は兄の家に居る~私が身を投げてやすやすと往生して浮いて居る所を奇麗な画にかいて下さい

第10章 鏡が池で写生をしていると岩の上に(全4回)

1回 鏡が池で思索にふける
(P118-2/鏡が池へ来て見る)
探偵は掏摸の親分~菫の花は帝王の権威に対峙しているという中学程度の観想~鏡が池の水草は水死美人の黒髪か

2回 那美さんの顔には憐れの情が足りない
(P120-12/二間余りを爪先上がりに登る)
赫い深山椿は嫣然たる妖女~水死美人には那美さんの顔が一番似合う~那美さんの表情には憐れが足りない

3回 源兵衛の語る鏡が池の名の由来
(P123-14/がさりがさりと足音がする)
再会した馬子の源兵衛は四十男~源兵衛が語る志保田の嬢様の黒い血筋~昔梵論児に懸想した志保田の嬢様が1枚の鏡を懐にして身を投げたことがある

4回 岩の上に立つ那美さんはひらりと身をひねる
(P126-13/「へええ。じゃ、もう身を投げたものがあるんだね」)
去年亡くなった母親も少し変であった~池の向こう側は大岩が突き出している~その上に那美さんが立っていた~驚きの跳躍

第11章 山門の石段を登りながら考えた(全4回)

1回 人のひる屁を勘定する人世
(P129-11/山里の朧に乗じてそぞろ歩く)
宵の明星もしくは月明かりの夜~用事もないがつい足が山門に向かう~円覚寺の塔中での思い出~漱石の本音が出る

2回 一列に並んだサボテンと1本の木蓮の大樹
(P132-10/仰数春星一二三の句を得て)
仰数春星一二三~岡つつじの怪~サボテン~木蓮の花~庫裏を訪ねる

3回 お寺で大徹和尚と了念に会う
(P135-12/「和尚さんは御出かい」)
履物を揃えないので了念に叱られる~寺の下には朧夜の海と漁火が見える~画描きにも博士があるか~東京の電車はうるさくてつまらぬもの

4回 和尚との禅問答
(P139-13/鉄瓶の口から烟が盛に出る)
屁の勘定た何かな~はあ矢張り衛生の方かな~衛生じゃありません探偵の方です~那美さんは和尚の法話を聞いて人間が出来てきた~那美さんは松の木である~奇麗な上に風が吹いても苦にしない

第12章 白鞘の短刀の行方(全6回)

1回 芸術家の条件
(P143-8/基督は最高度に芸術家の態度を具足したるものなり)
芸術家の条件~1枚の画もかかない画家~空気と対象物と色彩の関係~日本固有の空気と色を出すには~山へ行って画を描こうと思う

2回 那美さんは家の中で常住芝居をしている
(P146-2/襖をあけて、椽側へ出ると)
向こう2階に那美さんが立つ~那美さんの左手には白鞘が~無意識の常住芝居~藤村子厳頭の吟~美しいものは正しい

3回 海の見える野原で写生ならぬ漢詩に浸る
(P149-14/三丁程上ると、向うに白壁の一構が見える)
海は足下に光る~木瓜の花の下に寝ころぶ~木瓜の花に生まれ変わりたい~子供の頃木瓜の木で筆立てを作ったことがある~木瓜の詩完成

4回 那美さん野武士に財布を渡す
(P152-15/寝返りをして、声の響いた方を見ると)
髯の男を注視する~那美さんが現われる~二人は接近して向き合う~那美さんの懐には白鞘が~現れたのは財布であった

5回 画工那美さんに見付かる
(P156-1/二人は左右へ分かれる)
すぐ那美さんに見つかる~ここへ入らしてまだ一枚も御描きなさらないじゃありませんか~あれはわたくしの亭主です

6回 蜜柑山の久一さんの家へ行く
(P159-4/迅雷を掩うに遑あらず)
兄のいる本家へ行く~南向きの庭の先は蜜柑畠~その先は青海~「久一さん」「そら御伯父さんの餞別だよ」

第13章 鉄道駅で大切な人との別れ(全3回)

1回 川舟に全員集合
(P161-9/川舟で久一さんを吉田の停車場迄見送る)
久一さん軍は好きか嫌いかい~那美さんが軍人になったら嘸強かろう~太公望事件~誰も彼も運命の輪から外れることは出来ない

2回 那美さんの肖像画を描く話
(P164-5/舟は面白い程やすらかに流れる)
先生私の画をかいて下さいな~画工の驚ろきは那美さんの喜び~あの山の向こうを貴方は越していらしった~舟が着くとなかなか大きな町である

3回 永訣。那美さんに突然浮かんだ憐みの表情
(P167-9/愈現実世界へ引きずり出された)
画工の汽車論~汽車は文明であるが文明はまた人を押さえつける~文明による平和は真の平和ではない~危ない危ない~「愈御別かれか」「それでは御機嫌よう」「死んで御出で」~野武士の髯面が~最後の一句