明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

漱石「最後の挨拶」草枕篇 37

333.『草枕』全51回詳細目次(1)――第1章~第7章


 先にも断った通り回数分けやそのタイトルは勝手に付けたものである。回数分けのガイドとなる頁の表示は、岩波書店版『定本漱石』第3巻(2017年2月初版)に拠った。

第1章 山路を登りながら考えた (全4回)

1回 店子の論理
(P3-2/山路を登りながら、こう考えた)
俗世間の住みにくさと芸術の効用~主人公は30歳余~大きな石を迂回して旅を続ける

2回 雲雀の詩
(P6-3/忽ち足の下で雲雀の声がし出した)
シェリーの詩~雲雀は幸福か、それとも雲の中で死ぬのか~しかし苦しみのないのは何故だろう

3回 非人情の旅
(P8-15/恋はうつくしかろ)
喜怒哀楽・苦怒騒泣は人の世につきもの~芝居や小説もそれを免れぬならそんな世界はまっぴら

4回 画工の覚悟
(P11-12/唯、物は見様でどうにもなる)
旅に出逢うすべての人事を能舞台の出来事と見做すと~すべての人事を画帖に封じ込めたら

第2章 峠の茶屋で写生と句詠 (全4回)

1回 高砂の媼
(P15-3/「おい」と声を掛けたが返事がない)
茶店の婆さんは高砂の媼にうり二つ~婆さんが美しいのではなく高砂の媼が美しいのだ~婆さんの横顔を写生する

2回 那古井の志保田
(P18-7/折りから、竃のうちが、ぱちぱちと鳴って)
さあ御あたり~いい具合に雨も晴れました~ここから那古井迄は一里足らずだったね~宿屋はたった一軒だったね

3回 源さんと馬子唄
(P21-8/只一条の春の路だから)
源さんと婆さんが那古井の御嬢様の噂話をする~嫁入のとき馬でこの峠を越した~ミレーのオフェリア

4回 長良の乙女
(P23-15/「それじゃ、まあ御免」と源さんが挨拶する)
志保田の嬢様の話~長良の乙女の話~ともに2人の男が祟った~今度の戦争で夫の銀行が倒産

第3章 夜おそく那古井の宿へ到着 (全4回)

1回 春の夜の夢
(P27-10/昨夕は妙な気持ちがした)
夜8時の到着~晩い夕食と入浴~女中1人の怪~房州旅行の思い出~長良の乙女とオフェリアの夢

2回 歌う女
(P30-13/そこで眼が醒めた。腋の下から汗が出ている)
誰か小声で歌をうたっている~長良の乙女の歌か~海堂を背に月影に浮かぶすらりとした女~深更那美さん初登場~芸術家と常人の違い

3回 侵入者
(P34-9/余が今見た影法師も、只それ限りの現象とすれば)
余計な詮議は非人情の妨げ~詩人になる簡便法とは~入口の唐紙から女の影が~深夜の侵入者

4回 不意討ち
(P38-8/浴衣の儘、風呂場へ下りて)
ゆっくりめの朝風呂~風呂場の戸口での遭遇~那美さんの初セリフ~見たことのない表情~画にしたら美しかろう~不仕合せな女に違いない

第4章 スケッチブックの中の詩人 (全4回)

1回 添削もしくは付け文
(P41-9/ぽかんと部屋へ帰ると、成程奇麗に掃除がしてある)
写生帖に落書~発句に付け句か添削か~縁側のある部屋~やっと落ち着いて宿からの景色を見る 

2回 晩い朝食もしくは聴き取り調査
(P44-12/やがて、廊下に足音がして)
那美さんが引き返した理由~「うちに若い女の人がいるだろう」「へえ」「ありゃ何だい」「若い奥様で御座んす」~「和尚様の所へ行きます」「大徹様の所へ行きます」~向う二階の欄干に頬杖を突いて佇む

3回 青磁の羊羹
(P49-2/余は又ごろりと寝ころんだ)
メレディスの詩~那美さん羊羹を持って部屋に来る~源兵衛と婆さんは那美さんの情報源

4回 スケッチブックの中に入ってみる
(P52-10/茶と聞いて少し辟易した)
茶道は商人のやること~始めての会話は身上調書~長良の乙女の話の出所は那美さん~ささだ男もささべ男も両方男妾にするばかり

第5章 まるで浮世床 (全4回)

1回 髪結床の親方は元江戸っ子
(P57-2/「失礼ですが旦那は、矢張りやっぱり東京ですか」)
髪結床は神田松永町の出身で癇性でおしゃべり~しかも酔っ払っていた~石鹸なしに逆剃をかける

2回 志保田の出返り娘はキ印
(P60-15/「旦那あ、余り見受けねえ様だが)
髪結床は那古井の宿の隠居と東京で一緒だった~旦那あの娘は面はいい様だが本当はキ印しですぜ~本家の兄と仲が悪い

3回 納所坊主泰安の災難
(P64-13/「そうか、急勝だから、いけねえ)
観海寺の泰安が那美さんに付け文~那美さん読経中の破天荒~駘蕩たる春光と髪結床は対照の妙か

4回 観海寺の小坊主了念
(P68-11/こう考えると、此親方も中々画にも詩にもなる)
了念登場~泰安は生きて修業中~石段を上がると何でも逆様

第6章 座敷に独り居て神境に入る (全4回)

1回 何も見ず何も想わない楽しみの世界
(P71-11/夕暮の机に向う)
静かな宿の夕暮れ~忘我の境地で詩の世界へ入る~詩境をすら脱却する境地とは

2回 感興を画に乗せて
(P75-4/此境界を画にして見たらどうだろうと考えた)
詩境を画にするには~心を瞬時に截り取って絹の上に開示する~物外の神韻を伝える絵画はあるか

3回 画にもならず音楽にもならない興趣を詩で表現する方法
(P77-14/鉛筆を置いて考えた)
音楽はどうか~画工の結論は写生帖に詩を書くこと~すぐ画になりそうな詩が出来た

4回 振袖披露
(P80-11/余が眼を転じて、入口を見たときは)
那美さんが振袖を着て向こう2階の椽側を歩いている~表情もなく何度も往ったり来たり

第7章 浴場の怪事件(全3回)

1回 湯壺の中の哲学的考察
(P84-2/寒い。手拭を下げて、湯壺へ下る)
湯の中で思うのはまず白楽天~次に風流な土左衛門~そして再びミレーのオフェリア

2回 三味の音を聴いていると女が裸で入って来た
(P86-12/湯のなかに浮いた儘、今度は土左衛門の賛を作って見る)
どこかで三味の音が~万屋の御倉さんの想い出~突然風呂の戸が開いて那美さんが裸で入って来た

3回 那美さん湯に入る
(P89-12/注意をしたものか、せぬものかと)
声を掛けようか迷う~女の裸体は画工には美しい画題~しかし西洋画の裸婦モデルとは一線を隔す~那美さんの裸体は原始の美を発揮している