明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

漱石「最後の挨拶」行人篇 40

207.『塵労』1日1回(9)――Hさんの手紙 第7章 沼津(6月29日・6月22日~23日)(以下人物は一郎とHさんのみ)第28回 鎌倉着 手紙の書き出し~旅行に出て1週間、だんだん手紙を書く必要性を感じるようになった~一緒に旅行する相手のことを…

漱石「最後の挨拶」行人篇 39

206.『塵労』1日1回(8)――全旅程表 《移動・宿泊行程》(=は旧国鉄の幹線 -はそれ以外の鉄路を示す)1日目 新橋=大船(逗子鎌倉へは行かずそのまま東海道線)=国府津=(御殿場線)=三島=沼津。 沼津2泊。 3日目 沼津=三島-修善寺。 修善寺2…

漱石「最後の挨拶」行人篇 38

205.『塵労』1日1回(7)――漱石と鎌倉 前項で「『門』『彼岸過迄』『行人』『心』と4作続けて」と書いたが、『門』の鎌倉は主人公の参禅のための別格として、『彼岸過迄』からの3部作では、鎌倉は避暑地、旅行先の1つ、海水浴場として、晴れがましくも…

漱石「最後の挨拶」行人篇 37

204.『塵労』1日1回(6)――滞る日々(つづき) 三沢も相変わらず負けていない。 ①自分は大阪の岡田から受取った手紙の中に、相応な位地が彼地にあるから来ないかという勧誘があったので、ことによったら今の事務所を飛び出そうかと考えていた。「つい此間…

漱石「最後の挨拶」行人篇 36

203.『塵労』1日1回(5)――滞る日々 第4章 雅楽所での出来事(4月~5月・6月2日) 二郎・三沢・(雅楽所に来ていた知人・三沢の知人たち・三沢の婚約者・その兄・婚約者の親友) 第16回 1週間経ってもHさんからは何の通知もない~三沢やってきて…

漱石「最後の挨拶」行人篇 35

202.『塵労』1日1回(4)――三沢一郎お直の三角関係 第3章 三沢と一緒にHさんを訪ねる(3月24日) 二郎・三沢・三沢の母・Hさん・(兄) 第13回 三沢の母~三沢の結婚決まる~三沢はあの出帰りの娘さんの油絵(肖像画)を描いていた第14回 三沢…

漱石「最後の挨拶」行人篇 34

201.『塵労』1日1回(3)――父の来訪 第2章 父の来訪と兄のいない家(明治45年3月18日~23日) 二郎・父・母・お直・お重・芳江・(兄) 第6回 嫂の亡霊~「あの落付、あの品位、あの寡黙、誰が評しても彼女はしっかりし過ぎたものに違いなかった…

漱石「最後の挨拶」行人篇 33

200.『塵労』1日1回(2)――嫂の来訪(つづき) 第4回 珍しく嫂の方から兄との夫婦仲が悪くなる一方であることを打ち明けられる「二郎さん御迷惑でしたろう斯んな厭な話を聞かせて。妾今迄誰にもした事はないのよ、斯んな事。今日自分の宅へ行ってさえ黙…

漱石「最後の挨拶」行人篇 32

199.『塵労』1日1回(1)――嫂の来訪 『塵労』をまとまった1つの小説と見ると、ボリューム的には『坊っちゃん』『須永の話+松本の話(彼岸過迄)』『先生の遺書(心)』にほぼ等しい。漱石としては言いたいことの一番言いやすい枚数ではないか。しかし肝…

漱石「最後の挨拶」行人篇 31

198.『帰ってから』1日1回(9)――宴のあと(つづき) 第8章 長野家の冬(1月~3月) 二郎・母・お重・三沢・(一郎・お直・父) 第37回 下宿Ⅰ お貞さんが去ると共に冬も去った~二郎の下宿にはお重が時々やって来た第38回 下宿Ⅱ 母も1、2遍来た…

漱石「最後の挨拶」行人篇 30

197.『帰ってから』1日1回(8)――宴のあと 第7章 お貞さんの結婚(12月) 二郎・一郎・お直・芳江・父・母・お重・岡田・佐野・三沢 第33回 結婚Ⅰ 三沢との会話~異様なおのろけ~三沢は二郎の結婚相手を探そうとする~岡田と佐野の上京~久し振り家…

漱石「最後の挨拶」行人篇 29

196.『帰ってから』1日1回(7)――三沢の不思議な恋 三沢の不可解な恋愛については、前著でも触れたが、いくら考えても分からない。結局、「病気の原因は病気である」という無意味な一句にたどり着くしかないのであるが、鏡子の『漱石の思い出』にはいきな…

漱石「最後の挨拶」行人篇 28

195.『帰ってから』1日1回(6)――長野家の秋 第5章 長野家の秋(11月) 二郎・一郎・お直・母・お重・三沢 第20回 兄と自分Ⅰ 二郎は結婚前の直を知っていた~母もすすめる二郎の独立問題「二郎、学者ってものは皆なあんな偏屈なものかね」第21回 …

漱石「最後の挨拶」行人篇 27

194.『帰ってから』1日1回(5)――女景清「ごめんよ」事件 ここで一部重複するが、前著(『明暗』に向かって)で女景清についてまとめた項を再録したい。女景清のベーシックな問題点が整理されると思う。41.女景清「ごめんよ」事件 『明暗』はユニーク…

漱石「最後の挨拶」行人篇 26

193.『帰ってから』1日1回(4)――女景清と和歌山の夜 もうひとつ、こんなところに女景清の逸話が長々と挿入された理由についてだが、この逸話の前半部分「夏の夜の夢のような儚い関係」が、1ヶ月前の和歌山での二郎とお直の、「一夜の夢」と対になってい…

漱石「最後の挨拶」行人篇 25

192.『帰ってから』1日1回(3)――女景清の秘密(つづき) 女は二十年以上〇〇の胸の底に隠れている此秘密を掘り出し度って堪らなかったのである。彼女には天下の人が悉く持っている二つの眼を失って、殆ど他から片輪扱いにされるよりも、一旦契った人の心…