明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

漱石「最後の挨拶」草枕篇 17

313.『草枕』目次(4)第3章――那古井は2度目というけれど 第3章 夜おそく那古井の宿へ到着(全4回)1回 春の夜の夢(P27-10/昨夕は妙な気持ちがした。宿へ着いたのは夜の八時頃であったから、家の具合庭の作り方は無論、東西の区別さえわからなかった。何…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 16

312.『草枕』目次(3)第2章――画工33歳那美さん25歳 第2章 峠の茶屋で写生と句詠(全4回)1回 高砂の媼(P15-3/「おい」と声を掛けたが返事がない。軒下から奥を覗くと煤けた障子が立て切ってある。向う側は見えない。五六足の草鞋が淋しそうに庇から吊…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 15

311.『草枕』目次(2)第1章(つづき)――非人情の旅とは何か 第1章 山路を登りながら考えた(全4回)(承前)2回 雲雀の詩(P6-3/忽ち足の下で雲雀の声がし出した。谷を見下したが、どこで鳴いてるか影も形も見えぬ。只声だけが明らかに聞える。せっせと忙…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 14

310.『草枕』目次(1)第1章――真の詩人は坊っちゃんか 回り道をしたが、ここで『草枕』にも目次を付けてみる。引用はいつも通り『定本漱石全集第3巻』(2017年3月初版)。ただし新仮名遣いに改めている。回数分けは論者の恣意であるが、ガイドとしてその…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 13

309.『草枕』あぶない小説(4)――『一夜』の脚本 (前項の)3人の生涯は余計な話(小説的に空想した無駄話)であるが、難解な『一夜』を少しでも分かりやすくするため、ここで最後に本文を脚本ふうにリライトしてみよう。本文は引用と同じ青色で示すが、赤…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 12

308.『草枕』あぶない小説(3)――『一夜』3つの嘘 さて『草枕』の話に戻らねばならないが、その前に、『草枕』のプロローグたる『一夜』について、もう少し詳しく見てみよう。 前述したが『一夜』はよく分からない作品である。その上作者の漱石が(『猫』…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 11

307.『草枕』あぶない小説(2)――女王は3回初登場する 全13回の登場シーンを有つ那美さんであるが、その那美さんは贅沢にも初登場シーンが3回ある。それはあたかも漱石の処女作が『猫』・『坊っちゃん』・『倫敦塔』(あるいは『草枕』)と3つあること…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 10

306.『草枕』あぶない小説(1)――始めて描かれたヒロイン 『草枕』の最大の特長は那美さんというヒロインの造形であろう。ヒロインとしては金田富子、マドンナに次いで3番目の登場であるが、前2者はほとんどセリフがない。那美さんが始めて生きて自分の意…