明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

漱石「最後の挨拶」門篇 4

90.『門』の間取り図(承前)~『明暗』に向かって(第13項つづき) 《漱石「最後の挨拶」番外篇》(前項よりつづき) 13.『門』の間取り図(承前) 物語が進行して(といってもまだ何も事は起こらないが)、小六が同居する話が持ち上がる。ここで家の…

漱石「最後の挨拶」門篇 3

89.『門』の間取り図 ~『明暗』に向かって(第13項) 《漱石「最後の挨拶」番外篇》 宗助と御米が東京で棲み暮らす関口台(今の目白台)あたりの崖下の家について、又々で恐縮であるが、前著(『明暗』に向かって)からの引用文を以って、その間取り図を…

漱石「最後の挨拶」門篇 2

88.『門』平和な小説(2)――小六の学資 前項で挙げた『門』の(一読して分かる)特徴のうち、②の独身女性が登場しないことと関連するが、『門』の主人公は宗助と御米の夫婦者である。この夫婦は漱石の作品にあって例外的に仲が良い。 主役が夫婦である漱石…

漱石「最後の挨拶」門篇 1

87.『門』平和な小説(1)――不滅の名文 大西美智子の『巨人と六十五年』(2017年光文社刊)に、漱石の作品で(今現在では)何が好きですかと、著者が高齢の夫に聞く箇所がある。『それから』ですか『門』ですかと聞く妻に対して、やまいの床に臥す大西巨人…

漱石「最後の挨拶」それから篇 14

77.『それから』なぜ年次を間違えるのか(3)――『門』の年表(つづき) 『門』年表(つづき)明治42年(東京2)宗助30歳 小六20歳10月31日(日)物語の始まり宗助御米の日曜日小六の来訪11月回想/宗助のこれまで安之助のカツオ船石油発動機宗…

漱石「最後の挨拶」それから篇 13

76.『それから』なぜ年次を間違えるのか(2)――『門』の年表 誤 小六が高等学校の二年生になった(『門』4ノ7回末尾) 正 小六が高等学校の三年生になった(『門』4ノ7回末尾改) これは漱石の単純な書き間違いであろうか。それとも(文選工なり植字工…

漱石「最後の挨拶」それから篇 12

75.『それから』なぜ年次を間違えるのか(1)――『門』小六の学年 『門』の年表は門篇で考察すればよいとは思う。しかし本項の始めに『それから』の年表を作成して、そこに1年の錯誤があったときにすぐ気づけばよかったのであるが、そもそも年表の問題につ…