明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

漱石「最後の挨拶」門篇 34

120.『門』 ブログ総目次 前回で『門』36回が終了した。目次が最後になるのがブログの特長であろう。今回の目次でひとまず『門』全37回の確定である。細部はともかく、これで漱石の初期3部作が終わったかと思うと、とりあえず安堵の溜息を漏らさざるを…

漱石「最後の挨拶」門篇 33

119.『門』最後の謎 ―― 補遺として「説教する人」 前項で『門』の最後の日を3月20日と比定したが、これは小説の暦を明治43年と限定した場合の話であって、漱石が架空の年度を想定したのであれば、論者としては3月15日くらいを充てたい。勿論その日が…

漱石「最後の挨拶」門篇 32

118.『門』一日一回(10)――『門』目次第22章~第23章(ドラフト版) 第22章 帰宅明治43年1月25日(火)~1月27日(木)(宗助・御米・小六・坂井・坂井の子たち)1回 帰宅~御米と小六の感想~銭湯~同僚の感想~変わらぬ日2回 宗助は坂…

漱石「最後の挨拶」門篇 31

117.『門』一日一回(9)――『門』目次第18章~第21章(ドラフト版) 第18章 山門(1)――出立明治43年1月15日(土)~1月16日(日)(宗助・御米・役所の同僚・釈宜道・老師・居士)1回 『菜根譚』~宗助は禅の知識はないが、心の安寧を求め…

漱石「最後の挨拶」門篇 30

116.『門』一日一回(8)――『門』目次第15章~第17章(ドラフト版) 第15章 大晦日の風景明治42年12月31日(金)(宗助・御米・小六・清・坂井)1回 注連飾~伸餅~坂井への年末の挨拶2回 銭湯へ行く御米と清~夜景を見に行く小六~清は髪結…

漱石「最後の挨拶」門篇 29

115.『門』一日一回(7)――『門』目次第14章(ドラフト版) 第14章 宗助と御米の過去明治42年12月30日(木)(宗助・御米・安井・宗助の父)1回 宗助と御米は仲の好い夫婦~世間の鞭の先に附着する甘い蜜2回 宗助と安井~京大での出逢い3回 眼…

漱石「最後の挨拶」門篇 28

114.『門』一日一回(6)――『門』目次第13章(ドラフト版) 第13章 贖罪明治42年12月30日(木)(宗助・御米・坂井夫婦・坂井の子女・織屋・易者)1回 宗助の不安は御米の回復では解消されない~悲劇はまたいつでも繰り返し得る2回 甲州の織屋…

漱石「最後の挨拶」門篇 27

113.『門』一日一回(5)――『門』目次第10章~第12章(ドラフト版) 第10章 小六の話明治42年12月上旬~中旬(宗助・御米・小六)1回 小六から聞く安之助の事業の話~鰹舟からエレクトロニクス印刷術へ2回 小六の飲酒疑惑~御米の不安は小六の…

漱石「最後の挨拶」門篇 26

112.『門』一日一回(4)――『門』目次第7章~第9章(ドラフト版) 第7章 手文庫事件明治42年11月25日(木)~11月26日(金)(宗助・御米・清・坂井の下女・仲働・坂井の女の子・坂井)1回 店子の話~本多という老夫婦~大家の話~ピアノとブ…

漱石「最後の挨拶」門篇 25

111.『門』一日一回(3)――『門』目次第5章~第6章(ドラフト版) 第5章 歯医者明治42年11月6日(土)(宗助・御米・叔母・歯医者)1回 宗助の出勤中に叔母が来訪~安之助の鰹舟石油発動機2回 宗助歯医者へ行く3回 歯科処置室にて4回 神戸の養…

漱石「最後の挨拶」門篇 24

110.『門』一日一回(2)――『門』目次第4章(ドラフト版) 第4章 宗助の過去明治42年11月2日(火)~11月4日(木)(宗助・御米・小六・父・佐伯・叔母・安之助・杉原)1回 佐伯の叔母からの手紙~安之助は神戸へ行っていた。2回 この夫婦~兄…

漱石「最後の挨拶」門篇 23

109.『門』一日一回(1)――『門』目次第1章~第3章(ドラフト版) 漱石は胃の不調もあったが、『門』をほぼ一日一回のペースで執筆した。その意味で『門』は『明暗』の魁となる小説である。『門』と『明暗』は似ている。この2作は、『彼岸過迄』『行人』…

漱石「最後の挨拶」門篇 22

108.『門』人物一覧(4)――『門』目次第18章~第23章 第18章 山門(1) 明治43年1月15日(土)頃~1月25日(火)頃1回 宗助・御米・――・同僚2回 宗助・――・――・釈宜道3回 宗助・――・――・釈宜道4回 宗助・――・――・釈宜道・老師5回 宗助…

漱石「最後の挨拶」門篇 21

107.『門』人物一覧(3)――『門』目次第13章~第17章 第13章 贖罪 明治42年12月30日(木)1回 宗助・――・――・坂井・細君・長女・次女2回 宗助・――・――・坂井・細君・織屋3回 宗助・御米・――・坂井・細君・織屋4回 宗助・御米・――5回 宗助…

漱石「最後の挨拶」門篇 20

106.『門』人物一覧(2)――『門』目次第7章~第12章 第7章 手文庫事件 明治42年11月25日(木)~11月26日(金)1回 宗助・御米・―― 明治42年11月25日(木)2回 宗助・御米・―― 明治42年11月25日(木)3回 宗助・御米・―― 明治…

漱石「最後の挨拶」門篇 19

105.『門』人物一覧(1)――『門』目次第1章~第6章 さて最後は例によって目次の作成である。『門』全104回は23の章に分かたれている。前2作に比べ章分けがやや細かくなっているのはどういう理由によるものか。 それもあって今回はまず最初に、登場…

漱石「最後の挨拶」門篇 18

104.『門』カレンダーの謎(2)――小六の家を出た日はいつか それから約三十分程したら御米の眼がひとりでに覚めた。(12ノ2回末尾) 不思議な文章ではある。語り手漱石による叙述にせよ、宗助の視点から見た叙述にせよ、本来なら「御米の目が開いた」と…

漱石「最後の挨拶」門篇 17

103.『門』カレンダーの謎(1)――小六の引越はいつか さて「手文庫事件」(泥棒事件の言い換え――文面の浄化のため)のあと、『門』はようやく小説らしくなってくる。小六の同居(障子貼りの情景)、坂井との交際(屏風事件の顛末)。そしてこれらの出来事は…

漱石「最後の挨拶」門篇 16

102.『門』泥棒事件の謎(2)――ホームズ登場 ところでホームズならこの事件をどのように見るだろうか。 限りなく怪しいのは、「第一発見者」宗助である。もちろん『門』の読者であれば宗助が犯人たりえないことは考えなくても分かる。しかし坂井の立場から…

漱石「最後の挨拶」門篇 15

101.『門』泥棒事件の謎(1)――9つの謎 冒頭で『門』を平和な小説であると述べたが、その数少ない事件の一つに奇妙な泥棒事件なるものがある。盗られたものは金時計一つで、それも後日送り返されたという、プロの仕業としては(アマチュアの犯行としても)…

漱石「最後の挨拶」門篇 14

100.『門』コントのあとは主役の失踪(3)――小六の変身 宗助も御米も小さな問題は探せば見つかるようであるが、小六もまた漱石ふうの大雑把なようで細かい性格は別として、一回だけ失踪事件を起こしている。 11月いっぱいで寄宿舎を引き払い、宗助夫婦の…

漱石「最後の挨拶」門篇 13

99.『門』コントのあとは主役の失踪(2)――肝心な時にはいつもいない 昔話の第4章では、最後に御米の「夫よりか、あの六畳を空けて、あすこへ来ちゃ不可なくって」(4ノ14回)という提言で、物語はやっと動く気配を見せ始める。宗助は御米に遠慮があっ…

漱石「最後の挨拶」門篇 12

98.『門』コントのあとは主役の失踪(1)――佐伯の夫婦はイトコ同士 第1回第2回がショートコントだとすると、小説の本当の始まりが第3回なのだろうか。『門』第1章第3回は、何と主役宗助が日曜に独りで散歩に出た留守中の話になっている。叙述は早くも…

漱石「最後の挨拶」門篇 11

97.『門』始めにコントありき――近江のおおの字じゃなくって 漱石もまた小説の書き出しには気を遣った人であるが、とくに朝日入社以後の多くの作品は、新聞小説を意識したのであろうか、(ブルックナー開始ではないが)漱石開始とでもいうべき、独特の雰囲気…

漱石「最後の挨拶」門篇 10

96.『門』もうひとつの謎――小六をなぜ坂井の書生に出したのか 前項の話は、宗助が鎌倉へ(座禅を組みに)出かける前に、小六を坂井の書生に送り込めば済んだ話ではある。漱石はわざとそうしなかったのであろうか。 どちらにせよこの話にはもうひとつ不自然な…

漱石「最後の挨拶」門篇 9

95.『門』最大の謎――宗助はなぜ小六を残したまま家を出たのか 先にも述べたが『門』で最も不思議なのは、宗助が自宅に小六のいる間に(御米を残したまま)鎌倉へ10日間出かけてしまったことであろう。宗助が気にしないのはいい。宗助は自分が何らかの意思…

漱石「最後の挨拶」門篇 8

94.『門』年表確定――宗助御米の結婚生活は6年 漱石が6年と書いた、宗助と御米の二人暮した年月について、これまでの議論をまとめると、①京大入学年度・6年8ヶ月説=明治34年9月・5年8ヶ月説=明治35年9月(『それから』代助と同じ)②二人の棲む…

漱石「最後の挨拶」門篇 7

93.『門』もうひとつの年表――明治34年スタート説の難点 小六の学年はいいとして、漱石の月日の書き方を少しゆっくり目に解釈すると、宗助(と安井)の京大入学年度を、(明治35年でなく)明治34年であるとする年表も可能になる。それを試してみよう。…

漱石「最後の挨拶」門篇 6

92.『門』小六の学年詳細報告――さらなる正誤表 先に『それから』の論考の中で、『門』の年表も試みに作成した。・第75項 なぜ年次を間違えるのか(1)――『門』小六の学年漱石「最後の挨拶」それから篇 12 - 明石吟平の漱石ブログ ・第76項 なぜ年次を…

漱石「最後の挨拶」門 5

91.『門』の間取り図(完結篇)――勝手口は西でなく北 今回だけブログタイトルの一部を「門篇」から「門」に変えている。他人の成果に直接論評を加えているような書き方をしているので、その心覚えの意味もあって変えてみた。 また小論でおもに参照引用してい…