明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 38

294.『坊っちゃん』全45回詳細目次――カレンダーなし


 先にも断った通り回数分けやそのタイトルは勝手に付けたものである。回数分けのガイドとなる頁の表示は、岩波書店版『定本漱石』第2巻(2017年1月初版)に拠った。

第1章 坊っちゃん (全5回)

1回 親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る
(P249-5/親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る。
飛降事件~刃傷事件~勘太郎事件~人参畠事件~井戸埋立事件

2回 こいつはどうせ碌なものにはならない
(P251-6/おやじは些ともおれを可愛がって呉れなかった。)
家族の誰からも愛されない~母の死に目に会えず~下女清の登場~勘当事件(飛車投擲事件)~清だけが可愛がってくれる

3回 母が死んでから清は愈おれを可愛がった
(P253-7/母が死んでから清は愈おれを可愛がった。)
父と兄と男だけの味気ない生活~清の同情と異様な溺愛~3円借金事件

4回 六百円の使用法に就て寝ながら考えた
(P256-4/母が死んでから六年目の正月におやじも卒中で亡くなった。)
父の死~財産整理~兄に600円貰う~清は50円貰う~兄との別れ~物理学校入学

5回 もう御別れになるかも知れません
(P258-11/三年間まあ人並みに勉強はしたが別段たちのいい方でもないから、席順はいつでも下から勘定する方が便利であった。)
卒業~校長の呼び出し~中学校教師の口~清との別れ

第2章 到着 (全3回)

1回 松山初日に清の夢を見た
(P261-6/ぶうと云って汽船がとまると、艀が岸を離れて、漕ぎ寄せて来た。)
港屋で中学校の行き方を尋く~山城屋~港の鼻たれ小僧や宿の客引きや女中にも馬鹿にされる~階段下の部屋で1泊目

2回 教員控所で1人ずつ辞令を見せた
(P264-4/学校は昨日車で乗りつけたから、大概の見当は分って居る。)
校長にいきなり辞令返上~全員に渾名を付けて遣った~狸・赤シャツ・うらなり・山嵐・漢学の爺さん・野だいこ

3回 早速清へ手紙を書く
(P268-1/挨拶が一通り済んだら校長が今日はもう引き取ってもいい、尤も授業上の事は数学の主任と打ち合せをして置いて、明後日から課業を始めてくれと云った。)
授業は明後日から~階段下の部屋から大座敷へ~清への手紙~山嵐の急襲~いか銀へ宿替え~女房はウィッチに似ている

第3章 教室 (全3回)

1回 まちっとゆるゆる遣っておくれんかなもし
(P270-13/愈学校へ出た。初めて教場へ這入って高い所へ乗った時は、何だか変だった。)
最初の授業~あまり早くて分からんけれ~出来ん出来ん~お茶を淹れに来る宿の主人

2回 おい天麩羅を持って来い
(P274-5/それから毎日毎日学校へ出ては規則通り働く、毎日毎日帰って来ると主人が御茶を入れましょうと出てくる。)
骨董責め~其うち学校もいやになった~散歩中に蕎麦屋を見つけた~天麩羅蕎麦4杯

3回 住田温泉には遊郭も公園も団子屋もある
(P276-13/翌日何の気もなく教場へ這入ると、黒板一杯位な大きな字で、天麩羅先生とかいてある。)
天麩羅先生~天麩羅四杯但不可笑~天麩羅を食うと減らず口が~遊郭の団子~赤手拭~湯の中で泳ぐべからず

第4章 宿直事件 (全3回)

1回 宿直が無暗に出てあるくなんて不都合じゃないか
(P280-3/学校には宿直があって、職員が代る代る之をつとめる。)
宿直当番の夕~汽車で温泉へ行く~なるべくゆっくり時間を潰す~停車場で狸と会う~横丁で山嵐と会う

2回 そりゃイナゴぞなもし
(P282-11/夫から日はすぐくれる。くれてから二時間許りは小使を宿直部屋へ呼んで話をしたが、夫も飽きたから、寝られない迄も床へ這入ろうと思って、)
バッタ事件~詰問~イナゴのせいにして白を切る生徒~清の有難味がよく分かる

3回 世の中に正直が勝たないで外に勝つものがあるか
(P287-10/清の事を考えながら、のつそつして居ると、突然おれの頭の上で、数で云ったら三四十人もあろうか、二階が落っこちる程どん、どん、どんと拍子を取って床板を踏みならす音がした。)
咄喊事件~夢ではない~2階へ突撃~罠で向う脛を負傷~籠城覚悟~つい寝てしまう~詰問Ⅱ~校長登場~蚊に食われ顔中腫れる

第5章 ターナー島 (全3回)

1回 ひろびろとした海の上で潮風に吹かれるのは薬だと思った
(P292-6/君釣りに行きませんかと赤シャツがおれに聞いた。)
赤シャツ野だと課業後沖釣りへ~鮪の二匹や三匹~ターナー島の景色~マドンナとは何か

2回 清を連れてこんな美しい所へ遊びに来たい
(P295-13/此所らがいいだろうと船頭は船をとめて、錨を卸した。)
沖釣りは錘と糸と針だけ~鰹の一匹くらい~一番槍でゴルキを釣るが胴の間に叩きつけたら死んでしまった~赤シャツと野だもゴルキばかり~寝ころんで空を見ながら清のことを考える~山嵐を讒訴するような赤シャツと野だの内緒話

3回 さあ君は率直だからまだ経験に乏しいと云うんですがね
(P300-13/船は静かな海を岸へ漕ぎ戻る。君釣はあまり好きでないと見えますねと赤シャツが聞くから、ええ寝て居て空を見る方がいいですと答えて、)
山嵐に気を付けろという謎かけ~赤シャツのアドバイス坊っちゃんの書生論

第6章 職員会議 (全5回)

1回 君は学校に騒動を起すつもりで来たんじゃなかろう
(P304-15/野だは大嫌だ。こんな奴は沢庵石をつけて海の底へ沈めちまう方が日本の為だ。)
赤シャツは弱虫に極まっている~弱虫は(女のように)親切なもの~山嵐には氷水の1銭5厘返しておこう~坊っちゃんは膏っ手~昨日は失敬迷惑でしたろう~これから山嵐と談判するつもり~君そんな無法をしちゃ困る~君大丈夫かい

2回 山嵐との大喧嘩
(P309-1/所へ両隣りの机の所有主も出校したんで、赤シャツは早々自分の席へ帰って行った。)
おや山嵐の癖にどこ迄も奢る気だな~氷水の代は受け取るが下宿は出て呉れ~下宿料の十円や十五円は懸物を一幅売りゃすぐ浮いてくるって云ってたぜ

3回 職員会議の午後
(P312-2/午後は先夜おれに対して無礼を働いた寄宿生の処分法に就ての会議だ。)
校長とは煮え切らない愚図の異名~山嵐の顔は小日向の養源寺にある韋駄天の絵に似ている~うらなり君の遅刻~狸の挨拶は謝罪から~すべては自分の寡徳の致す所

4回 私は徹頭徹尾反対です。そんな頓珍漢な処分は大嫌いです
(P315-12/おれはじれったく成ったから、一番大に弁じてやろうと思って、半分尻をあげかけたら、赤シャツが何か云い出したから、やめにした。)
沈黙の会議室~赤シャツの長談義~野だの阿諛追従~坊っちゃんの発言に一同失笑~流れは教頭派に

5回 山嵐吠える
(P318-8/すると今迄だまって聞いて居た山嵐が奮然として、起ち上がった。)
山嵐がおれの言いたいことを全部言ってくれた~宿直中に温泉へ行ったことも追加で指摘された~坊っちゃんの謝罪に一同また失笑~最後に大失言「マドンナに逢うのも精神的娯楽ですか」

第7章 マドンナ (全5回)

1回 萩野の家へ宿替え
(P322-6/おれは即夜下宿を引き払った。宿へ帰って荷物をまとめて居ると、女房が何か不都合でも御座いましたか、御腹の立つ事があるなら、云って御呉れたら改めますと云う。)
いか銀の女房の狼狽~士族屋敷で下宿探し~うらなりの家を訪ねる~その夜から萩野の家の下宿人となる~清からの手紙を待ちわびる~萩野の婆さんの世間話

2回 渾名の付いてる女にゃ昔から碌なものがいない
(P325-11/「然し先生はもう、御嫁が御有りなさるに極っとらい。私はちゃんと、もう、睨らんどるぞなもし」)
婆さんの語るマドンナとうらなりの婚約事件~赤シャツの横槍~山嵐の仲介~赤シャツと山嵐の確執

3回 やっと届いた清からの手紙
(P330-6/是じゃ聞いたって仕方がないから、やめにした。夫から二三日して学校から帰ると御婆さんがにこにこして、)
山嵐て何ぞなもし~符箋つきの清の手紙を読む~もし渾名をつけたら清だけに知らせろ~お小遣いがなくて困るかも知れないから為替で10円あげる~芋責めの食事を生卵でしのぐ

4回 マドンナ初登場
(P333-6/今日は、清の手紙で湯に行く時間が遅くなった。然し毎日行きつけたのを一日でも欠かすのは心持がわるい。)
停車場でうらなりと会う~遠山の母娘登場~赤シャツも来る~金鎖りと金側の赤シャツの時計~上等の切符で下等の車輛に乗り込む

5回 野芹川の散歩デート
(P336-13/温泉へ着いて、三階から、浴衣のなりで湯壺へ下りて見たら、又うらなり君に逢った。)
温泉を出て散歩する~化物が寄り合う物騒な世界~早く切り上げて東京へ帰りたい~野芹川の堤で赤シャツとマドンナに出くわす

第8章 赤シャツ (全4回)

1回 赤シャツと山嵐
(P340-3/赤シャツに勧められて釣に行った帰りから、山嵐を疑ぐり出した。)
いいえ僕はあっちへは行かない湯に入ってすぐ帰った~赤シャツは嘘つきだ~机の上に置いたままの1銭5厘~山嵐とはまだ仲直り出来ないのに赤シャツとは交際する

2回 赤シャツの家で昇給話を聞く
(P326-4/赤シャツに逢って用事を聞いて見ると、大将例の琥珀のパイプで、きな臭い烟草をふかしながら、こんな事を云った。)
赤シャツの家に呼ばれて行く~赤シャツの家には弟がいる~増給の話~うらなりの転勤話~数学主任のほのめかし~君俳句をやりますか

3回 萩野の婆さん再び
(P345-13/所へ不相変婆さんが夕食を運んで出る。今日も亦芋ですかいと聞いて見たら、いえ今日は御豆腐ぞなもしと云った。)
うらなりの転勤は赤シャツと校長の陰謀~誰が上がってやるもんか~先生は月給が御上りるのかなもし

4回 増給を断る奴が世の中にたった一人飛び出して来た
(P349-5/小倉の袴をつけて又出掛けた。大きな玄関へ突っ立って頼むと云うと、又例の弟が取次に出て来た。)
赤シャツの家にまた行く~野だが来ている~赤シャツの顔は金時のようだ~増給を断る~赤シャツの御談義ふたたび

第9章 送別会の夜 (全4回)

1回 坊っちゃんの下宿で送別会の打合せ
(P353-12/うらなり君の送別会のあると云う日の朝、学校へ出たら、山嵐が突然、君先達はいか銀が来て、君が乱暴して困るから、どうか出る様に話して呉と頼んだから、真面目に受けて、君に出てやれと話したのだが、)
山嵐の謝罪~1銭5厘撤収~仲直り~酒なんか飲む奴は馬鹿だ~山嵐を家に呼ぶ~送別会でうらなりを応援したい~赤シャツの悪行を暴きたい

2回 送別会始まる
(P357-11/おれは余り感心したから、君その位の腕なら、赤シャツの五人や六人は一度に張り飛ばされるだろうと聞いたら、無論さと云いながら、曲げた腕を伸ばしたり、縮ましたりすると、)
送別会は花晨亭の50畳敷~あれは瀬戸物じゃありません伊万里です~山嵐の稲光にべっかんこうで応える

3回 山嵐の送別の言葉
(P360-12/赤シャツが席に復するのを待ちかねて、山嵐がぬっと立ち上がったから、おれは嬉しかったので、思わず手をぱちぱちと拍った。)
美しい顔をして人を陥れるようなハイカラ野郎は延岡には1人もいない~不貞無節なる御転婆を慚死せしめんことを~うらなりの態度はまるで聖人~宴席は大分乱れてきた

4回 狂乱の十五畳敷
(P364-13/所へ御座敷はこちら?と芸者が三四人這入って来た。)
校長に続いて赤シャツも退席~芸者も混じって大宴会~赤シャツの馴染みの芸者は鈴ちゃん~越中褌の裸踊り~野だをぽかりと殴る~山嵐は野だを払い倒す

第10章 祝勝会の夜 (全4回)

1回 祝勝会に生徒を引率
(P368-8/祝勝会で学校は御休みだ。練兵場で式があると云うので、狸は生徒を引率して参列しなくてはならない。)
こんな奴等と一緒では人間が堕落するばかり~早く東京へ帰って清と暮らしたい~日本人は皆口から先へ生まれた

2回 山嵐が牛肉を持って訪れる
(P371-14/祝勝会の式は頗る簡単なものであった。旅団長が祝詞を読む、知事が祝詞を読む。参列者が万歳を唱える。それで御仕舞だ。)
清に手紙を書こうとしたが1字も書けない~庭にある1本の蜜柑の木~湯島のかげまた何だ~君そこの所はまだ煮えていないぜ~赤シャツには馴染みの芸者がいる~赤シャツ退治の秘策

3回 祝勝会の余興
(P376-2/おれと山嵐がしきりに赤シャツ退治の計略を相談して居ると、宿の婆さんが出て来て、学校の生徒さんが一人、堀田先生に御目にかかりたいてて)
赤シャツの弟が山嵐を誘いに来た~くす玉の花火が上がる~太鼓と真剣による高知の踊り

4回 師範と中学の乱闘騒ぎに巻き込まれる
(P379-5/おれと山嵐が感心のあまり此踊を余念なく見物して居ると、半丁許り、向の方で急にわっと云う鬨の声がして、今迄穏やかに諸所を縦覧して居た連中が、俄かに波を打って、右左りに揺き始める。)
赤シャツの弟が先生喧嘩ですと呼びに来る~止めに入る山嵐坊っちゃん~巡査に捕まったのは2人だけ

第11章 天誅 (全6回)

1回 今朝の新聞を御見たかなもし
(P382-3/あくる日眼が覚めて見ると、身体中痛くて堪らない。)
近頃東京から赴任した生意気なる某~再び教育界に足を入るる余地なからしむる~いや昨日は御手柄で~名誉の御負傷でげすか~赤シャツは自分の弟が誘ったせいだと弁明して回る

2回 新聞に書かれるのは泥亀に喰い付かれるようなもの
(P385-11/帰りがけに山嵐は、君赤シャツは臭いぜ、用心しないとやられるぜと注意した。)
赤シャツの策に乗ったようだ~わるくすると遣られるかも知れない~一度新聞に書かれるとどうすることも出来ない

3回 履歴なんか構うもんですか履歴より義理が大切です
(P388-4/夫から三日許りして、ある日の午後、山嵐が憤然とやって来て、愈時機が来た、おれは例の計画を断行する積だと云うから、そうかそれじゃおれもやろうと、即座に一味徒党に加盟した。)
山嵐は校長に処決を求められた~誰が両立してやるもんか~校長室での談判~辞職されてもいいから代わりのあるまでどうかやってもらいたい

4回 奥さんの御ありるのに夜遊びはおやめたがええぞなもし
(P391-4/山嵐は愈辞表を出して、職員一同に告別の挨拶をして浜の港屋迄下ったが、人に知れない様に引き返して、温泉の町の枡屋の表二階へ潜んで、障子へ穴をあけて覗き出した。)
山嵐退職~枡屋の2階から角屋を見張る~1週間頑張っていい加減飽きてきた~八日目に山嵐は眼を輝かせた~小鈴の入るのを見たという

5回 増給が嫌だの辞表を出したいのって、ありゃどうしても神経に異状があるに相違ない
(P394-7/世間は大分静かになった。遊廓で鳴らす太鼓が手に取る様に聞える。月が温泉の山の後からのっと顔を出した。)
赤シャツと野だがやっと現れる~坊っちゃんの悪口を言っている~朝5時までの辛い監視~角屋から出て来た2人を尾行~城下をはずれたところで襲撃~野だの顔へ玉子を叩きつける

6回 野だに貴様も沢山かと聞いたら無論沢山だと答えた
(P397-13/おれが玉子をたたきつけて居るうち、山嵐と赤シャツはまだ談判最中である。)
山嵐は赤シャツを坊っちゃんは野だをぽかぽか殴る~7時下宿に帰って荷造りして出る~汽車で港屋へ~退職届を投函~山嵐と午後2時まで寝た~夜6時の汽船で出立~上京と後日譚