明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

漱石「最後の挨拶」彼岸過迄篇 15

137.『彼岸過迄』の章分け――『風呂の後』『停留所』


 さてここで、『風呂の後』と『停留所』を振り返って見よう。『三四郎』『それから』『門』ではそれぞれ10いくつなり20いくつなりの章分けが施されてあった。『彼岸過迄』からは短篇形式とはいいながら、新聞連載回の表記も都度付加するのが一般的になっている。論者はそれ以前の作も回数表示すべきという意見であるが、ここで反対に『彼岸過迄』を章分けすることとし、その章タイトルも(余計なことだが)添えて、連載回を追ってみたい。

『風呂の後』(全12回)

第1章 田川敬太郎の冒険(全5回)

1回 敬太郎ビールを飲む
2回 銭湯における敬太郎と森本
3回 森本の冒険譚
4回 田川の蛸狩
5回 新アラビア物語

第2章 森本の話(全4回)

6回 明治43年か明治44年か
7回 森本の気焔
8回 森本の冒険譚~北海道測量篇
9回 森本の神託と失踪

第3章 大連からの手紙(全3回)

10回 下宿の主人雷獣登場
11回 敬太郎雷獣に怒る
12回 冒険者の手紙

『停留所』(全36回)

第1章 須永という友人(全4回)

1回 母子家庭の須永は高等遊民候補者
2回 神田須田町の須永の家は仲働きと下女の4人暮し
3回 内幸町の叔父は須永の母の妹の連れ合い
4回 本郷台町の敬太郎の下宿は三階建てである

第2章 蛇首のステッキ(全5回)

5回 敬太郎と須永は塩原金之助と夏目金之助のことか
6回 ヴァガボンドへの返書と玄関の洋杖
7回 従妹とイトコ
8回 敬太郎の田口家訪問1回目
9回 敬太郎の田口家訪問2回目

第3章 須永の母(全4回)

10回 敬太郎は須永の母と話し込む
11回 高等遊民と言われるのは恥ずかしい
12回 田口要作には娘が二人ある
13回 実業家にして成功者にして剽軽者の田口要作

第4章 浅草の文銭占い(全7回)

14回 他と繋がっていないという不安感・孤独感から来る苦しみ
15回 売卜者へかかるための3つの故事
16回 敬太郎によって語られた浅草の追憶
17回 文銭占い「占ないは私(わたくし)がやるのです」
18回 婆さんの御託宣(1)
19回 婆さんの御託宣(2)
20回 敬太郎の田口家訪問3回目

第5章 田口要作の依頼(全3回)

21回 田口からの依頼が速達便で届く
22回 文銭占いの婆さんの家は浅草か蔵前か
23回 洋杖に仕込まれた蛇頭の秘密

第6章 交差点の真ん中で(全3回)

24回 漱石作品中唯一の策謀「法学協会雑誌」事件
25回 西と東2つの小川町停留所
26回 矢っ張り東が好かろう

第7章 男と女(全4回)

27回 田口千代子2回目の登場
28回 敬太郎断念す
29回 女を見ていたら突然目的の男が現われる
30回 敬太郎はなぜ目的の人物を特定し得たのか

第8章 レストランにて(全6回)

31回 4時~5時のデートに6時到着とは
32回 敬太郎は男の眉と眉の間に大きな黒子を認めた
33回 男女の話はちっとも分からない
34回 敬太郎は先に店を出る
35回 男と女謎の反転
36回 尾行失敗