明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

坊っちゃん

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 10

266.『坊っちゃん』聖典発掘(1)――松山弁の呪縛 ここで趣向を変えて、せっかく集英社版『直筆で読む「坊っちゃん」』が出版されているのだから、虚子が書き加えたとされる松山弁絡みの部分を取り去った、漱石の書いたままの「文章」を復元してみたい。(「…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 9

265.『坊っちゃん』のカレンダー(4)――もうひとつのカレンダー 滑稽小説『坊っちゃん』に自分の人生を(勝手に)結びつけられては、漱石もさぞ迷惑であろうが、チャプリンの映画の目立たないギャクに、チャプリンの幼少期の悲劇が感じ取られることもあるの…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 8

264.『坊っちゃん』のカレンダー(3)――結末の謎 ところで書出しの1行が漱石のすべてを表わすという議論の当否はともかくとして、『坊っちゃん』末尾の一節もまた、漱石にとっては様々に考えた末の、まさに掉尾を飾るに相応しい名文ではなかろうか。 汽船…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 7

263.『坊っちゃん』のカレンダー(2)――23歳の始まり 「さあ君はそう率直だから、まだ経験に乏しいと云うんですがね……」「どうせ経験には乏しい筈です。履歴書にもかいときましたが二十三年四ヶ月ですから」「さ、そこで思わぬ辺から乗ぜられる事があるん…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 6

262.『坊っちゃん』のカレンダー(1)――充実の秋 坊っちゃんの年(23歳)の話が出たからには、本ブログ恒例の、暦の検証がなされないわけには行くまい。『坊っちゃん』のカレンダーは、小説が進行するに従って徐々に確定していくのであるが、後付けにせよ…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 5

261.『坊っちゃん』日本で一番有名な小説(5)――日本で一番有名な下女 質屋の倅勘太郎のおかげで余計なことまで書いてしまったが、本来一番始めに来ておかしくない家族の紹介が、そんな与太話の後塵を拝することになった。漱石にとって家族というものの位置…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 4

260.『坊っちゃん』日本で一番有名な小説(4)――東西南北の謎 「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る。」 では冒頭のくだりから、その書出しの1行の内容が具体的に語られている所を見てみよう。持ち前の肝癪(癇癪)や乱暴・そそっかしさのため…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 3

259.『坊っちゃん』日本で一番有名な小説(3)――書出しの1行にすべてがある 『坊っちゃん』の有名な書出し、「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る。」については前著(『明暗』に向かって)でも少し述べたことがあるが、改めて次の2項目にまと…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 2

258.『坊っちゃん』日本で一番有名な小説(2)――何の用だろう 2007年10月集英社から『直筆で読む「坊っちゃん」』という漱石の直筆原稿の写真版が出版されて、一般の愛読者にとっての『坊っちゃん』に関する本文の問題は一応終結した。しかし過去に上梓され…

漱石「最後の挨拶」坊っちゃん篇 1

257.『坊っちゃん』日本で一番有名な小説(1)――ライヴァルは『心』と『破戒』 2020年7月にスタートした本ブログも、早や3年目に入った。対象も『三四郎』『それから』『門』の初期三部作、『彼岸過迄』『行人』『心』の中期三部作を了え、順番としては次…