明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

漱石「最後の挨拶」草枕篇 9

305.『草枕』幻の最終作品(3)――もうひとつの『明暗』と『迷路』 漱石の手帳(メモ)を再度引用する。〇二人して一人の女を思う。一人は消極、sad, noble, shy, religious, 一人は active, social. 後者遂に女を得。前者女を得られて急に淋しさを強く感ず…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 8

304.『草枕』幻の最終作品(2)――主人公は芸術家 『三四郎』以降の新聞小説を3部作のセットとして捉え、そのため『道草』『明暗』に続く「幻の最終作品」が構想されていた筈である、というのが前著(『明暗』に向かって)の主張の1つである。さてその幻の…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 7

303.『草枕』幻の最終作品(1)――3部作の秘密 さて本ブログは、Ⅰ 青春3部作(『三四郎M41』『それからM42』『門M43』)Ⅱ 中期3部作(『彼岸過迄M45』『行人T2』『心T3』) を順に取扱ったあと、最後の作品群に移る前に、『坊っちゃん』『草枕』(おそら…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 6

302.『草枕』降臨する神々(6)――消えろ消えろ束の間のともしび そして調子に乗ってもう1つ、『趣味の遺伝』の中にある漱石のマクベス論について言及した記念として、論者の生涯で最も記憶に残るマクベスの名が語られた場面を紹介したい。それは堤重久の『…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 5

301.『草枕』降臨する神々(5)――『趣味の遺伝』の実相 マクベスが出て来るようでは何人も黙って引き下がるしかないのだが、ここで『趣味の遺伝』の筋書きをまとめれば、①ある日浩さんが本郷郵便局で令嬢を見染めた。②令嬢も密かに感応したがピュアな浩さん…

漱石「最後の挨拶」草枕篇 4

300.『草枕』降臨する神々(4)――『趣味の遺伝』とマクベス とは言っても、『趣味の遺伝』の書き足りない部分というのは、やはり気になる。創作の意図は(余計なお世話だから)問わないにしても、漱石があの物語の結構をどのように考えていたかは、探ってみ…