明石吟平の漱石ブログ

漱石文学がなぜ読まれ続けるのか。その謎解きに挑む。

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

漱石「最後の挨拶」三四郎 外伝1

46. 『三四郎』外伝(1)――森の女と云う題が悪い さて「目次」が最後に来てしまったが、前回の45回まででひとまず『三四郎』の回はお終いである。 次は『それから』になるが、その前にインターバルとして、余計なことをいくつか書くことにする。これはあ…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 43

45.『三四郎』ブログ総目次 1.『三四郎』112年目の本文改訂(1)―― 字下ゲセズ漱石「最後の挨拶」三四郎篇 1 - 明石吟平の漱石ブログ 2.『三四郎』112年目の本文改訂(2)―― 改行してはいけない漱石「最後の挨拶」三四郎篇 2 - 明石吟平の漱石ブロ…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 42

44.『三四郎』目次(3)―― 第10章~第12章・エピローグ(ドラフト版) (前項よりつづく) 第10章 アトリエの客12月10日(水)頃(広田先生・客の男・原口家の小女・原口・美禰子・美禰子の婚約者)1回 広田先生の病気~元教え子の中学教師~田…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 41

43.『三四郎』目次(2)―― 第5章~第9章(ドラフト版) (前項よりつづく) 第5章 ストレイシープ11月9日(土)~11月10日(日)(よし子・野々宮・美禰子・広田先生・与次郎)1回 よし子の水彩画2回 野々宮と里見の関係を聞き取り調査3回 よ…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 40

42.『三四郎』目次(1)―― 第1章~第4章(ドラフト版) 『三四郎』は漱石によって1から13に分割されているが、小論では1章から12章およびエピローグに分かち、その簡単な概要を新聞掲載回と共に掲げることにする。また章ごとに三四郎以外の登場人物…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 39

41.『三四郎』最後の疑問(2)―― 魔の13回 「二人きり」を離れても、変な記述は探せば見つかるようである。それは三四郎と美禰子との正式な初対面たる引越の日のこと。荷物を積んだ大八車と共に与次郎が到着する。「里見の御嬢さんは、まだ来ていないか」…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 38

40.『三四郎』最後の疑問(1)―― デヴィル大人とは何か 『三四郎』において広田先生の引越以外に疑問点はもうないか。 三四郎と(池の女を除く)美禰子の(二人きりの)逢瀬は全部で8ヶ所(厳密には7ヶ所)。いずれも印象的で『三四郎』の名を永遠たらし…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 37

39.『三四郎』の錬金術―― 高等学校答案調べの怪 さて漱石の小説の中で女の話に次いで難解なのが金の話である。「坊っちゃん」はお金に恬淡であると、一般には思われがちであるが、小説『坊っちゃん』は、全篇くまなくお金の話に満ちている。主人公は常にお金…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 36

38.『三四郎』池の女(4)―― 見返り美人(つづき) (前項よりつづき) ⑤まともに男を見た ⑦無論習って覚えたものではない これらは漱石が三四郎を離れて、少しだけ美禰子に乗り移ったような書き方になっている例である。 漱石は俯瞰をしない。漱石は基本的…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 35

37.『三四郎』池の女(3)―― 見返り美人 池の女は初会(9月初旬)の後、1ヶ月と1週間を経て(10月中旬)、再び三四郎に遭遇する。初会は三四郎が野々宮(兄)を訪ねた帰りしな、2回目は野々宮(妹)のよし子を見舞って病室を出た直後、まだ建物内での…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 34

36.『三四郎』池の女(2)―― ひめいちの焼き方 (前項よりつづき) ⑤「是は何でしょう」と云って、仰向いた 前項③「まぼしい女」と並んで、「仰向く女」「見上げる女」もまた漱石のおはこである。喉から顎にかけての(女性特有の)曲線を、漱石は好むのか。…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 33

35.『三四郎』池の女(1)―― 初登場シーンの約束事 さて『三四郎』に戻って、汽車の女の次は池の女である。その池の女の初登場シーン、第2章の第4回。 ①不図眼を上げると、左手の岡の上に女が二人立っている。女のすぐ下が池で、池の向こう側が高い崖の木…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 32

34.『三四郎』のカレンダー(補遺)―― 三部作の秘密 漱石は自分の書きたいようにしか書かなかった我儘な作家であったが、また新作ごとに趣向を変え、何かしらの工夫を凝らす、サーヴィス精神も備えた篤実な作家でもあった。 漱石は二番煎じ・同工異曲・(小…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 31

33.『三四郎』のカレンダー(10)―― エピローグの秘密 さて『三四郎』第13章全1回は、前にも少し触れた通り、それまでの章とはまったく別仕立ての回となっている。前半は三四郎さえ登場しない。後半も叙述は三四郎を離れて、元に戻るのは最後の数行だけ…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 30

32.『三四郎』のカレンダー(9)―― 天長節ふたたび ここであらためて明治40年説に則り、『三四郎』全体のカレンダーをもう一度整理しておく。明治40年8月29日(木) 三四郎の出立日(推定)。明治40年8月30日(金) 物語の始まり。名古屋泊。(…

漱石「最後の挨拶」三四郎篇 29

31.『三四郎』のカレンダー(8)―― 広田先生「夢の女」 年次の話はもういいよと言われそうであるが、最後に一つだけ、第11章の広田先生の夢の話について。第10章でついに美禰子の婚約者を登場させ、物語はもう実質的には終わっている。それで気が緩んだ…